http://www.mlit.go.jp/crd/web/topic/pdf/takuchibousai_manual070409.pdf
谷埋め型大規模盛土造成地の安定性については、二次元の分割法により検討することを標準とする。「2次元分割法」とは幅広い記載に感じますが、基準独自の定義があります。具体的な計算式は「宅地防災マニュアルの解説〔第二次改訂版〕」「大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説」に掲載されています。
http://www.mlit.go.jp/common/001089011.pdf
先日、この式を使おうかと式を読み始めたのですが、非常に不可解。いえ、複合すべり(谷埋め型)の直線部分にモーメントが使われているようです(現行のガイドラインの図中では「円弧の場合」となっていますが)。
通常、モーメント比は円弧、力の比は複合や直線すべりでと考えていましたが、この式はそうなっていません。直線部分のモーメント原点(任意点O)はどうやって決めるのか?円弧部分のモーメント原点と一致しないが良いのか?導出や出典がないので追いかけられない、と途方に暮れていました。
式の形だけを見ると、おおざっぱにはモーメント原点が分割片の上方に離れるほど Rti が大きくなり、安全率は高くなりそうです。水平に離れるほど、Rwi や Rri が大きくなり、安全率が低くなりそうです。一意に決められない直線部分の原点の取り方次第で答えが変わりそうというのはすっきりしません。安全率が低くなる原点を探索せよ、ということでしょうか?
PowerSSA(Ver.5.5、五大開発)と斜面の安定計算(Ver.12、FORUM8)はこの式に未対応です。COSTANA(Ver.18.1F、富士通エフ・アイ・ピー) だけがこの基準に対応と謳われていましたので、試算してみました。
結果、やはり原点の取り方によって安全率が変わります。傾向も、まあまあ想定に沿っています。
これ以上の理解は困難なので、COSTANAにおけるモーメント原点の決め方についてサポートさんに確認してみました。が、明解な回答は帰ってきません。(SEさんなのか、ソフトの使い方には幾分慣れていらっしゃるようですが、力学の基礎理論を御存知ないようでした)。
五大さんとFORUM8 さんにも確認してみましたが、両社ともあえて実装していないように受け止められました。(富士通さんとは対照的に、FORUM8さんは技術的な回答でした)。
ただ、実装している富士通さんも悪くはないと思います。基準通り計算されているようですので、設計通りなのでしょう。もともと安全率の定まらない計算式なのか、2次元の0.01にこだわる業界がおかしいのか?
結局、解説で定義される「2次元分割法」を使うのをやめました(2社もこのような判断だったのかもしれません)。
標準以外にも簡易ヤンブーや 3次元計算などが紹介されており、基準の中で比較的自由に泳げますので、すっきりしない式は使わないことにしました。
それにしても、この谷埋め型大規模盛土造成地の安定計算式、どのようにして生まれたのでしょうか?ひょっとすると、直線部分の原点の決め方が出典に書かれているのかもしれません。
今後、何かしらの情報に触れる機会があるかもしれませんので、その時を楽しみにしておきましょう。
**************************************
マニュアルの解説では、盛土の安定計算箇所の全応力式と有効応力式の「間隙水圧」の書き方が曖昧。2巻の軟弱地盤ので箇所ではきちんと書かれていますので、担当者が別なのでしょうね。
0 件のコメント:
コメントを投稿