付加体の性状は、地質屋さんならすぐにイメージできると思います。
「互層上であっても、泥岩層がせん断されている」「せん断帯や小断層に富んでいる」「混在岩が多く存在する」など、せん断・攪乱されたイメージが強いと思います。それは「付加体」の形成過程を知ることで納得できるようになるのですが、でき方を御存知ない設計屋さんはには、「付加体」と言っても通じません。
根本的なイメージを作ってもらう簡単な絵はないのか?と探してますと、なかなか良い本がありました。
堤之泰「絵でわかる日本列島の誕生」講談社
http://www.kspub.co.jp/book/detail/1547735.html
なかなか理解しやすい本ですね。2章に付加体の説明があります。絵もブルドーザーでかき上げる+コテでそこ付けするなど、工夫されていました。一般向けの本だと思いますが、これは地質屋さんが読んでも良いでしょうね。
1部、2部では、プレートテクトニクスを根底に置いた日本列島の形成過程に関する過去の議論、一般論が書かれています。
3部は、地質屋さん向けの話ですね。日本列島押し出し説(知りませんでした)など、比較的新しい議論も紹介されています。水平構造なども含めた、このあたりの論文は個人的にわかりにくい部類だと思うのですが、この本では絵を簡略化し、わかりやすく書かれています。
最後の地質帯各論も、良く整理されたなあと思います。「付加体の形成過程を・・・」と偉そうに言いながら、そのベースである日本列島のでき方を十分に理解していない私には、ちょうど良いレベルでした(北海道はいまだによくわからないです)。以下に端折って書き残しましょう。
①大陸起源(主として北中国地塊起源)
├大陸地殻(北中国地塊)
│├日立変成岩類(500Ma:カンブリア紀花崗岩類、変成岩)
│├南部北上帯(450Ma:オルドビス~シルル紀花崗岩類、中・古成層)
│├飛騨帯(310~170Ma:花崗岩、250Ma片麻岩)
│└肥後帯(250Ma:片麻岩)
└南中国地塊との衝突帯?
└宇奈月帯(253~258Ma:中圧型変成岩)
②南北中国衝突(中国地塊の付加体起源の蛇紋岩メランジュ)
├三群-蓮華帯(300Ma:高圧型変成岩)
└黒瀬川帯(ペルム紀付加体、蛇紋岩メランジュ)
*300~150Ma:ペルム紀~ジュラ紀のパンゲア超大陸の形成
・日本列島が30Maに大陸から分離したとされていることは有名ですね。その随分前に、2つ以上の地塊が沈み込み帯により衝突した、それに③の付加体が順次形成されたという発想ですね。
③ペルム紀以降の地質体
├非変成・弱変成付加体
│├秋吉帯・超丹波帯(ペルム紀~トリアス紀)
│├渡島帯・北部北上帯・足尾帯・美濃帯・丹波帯・秩父帯(ジュラ紀~前期白亜紀)
│└四万十帯・空知-エゾ帯・日高帯((白亜紀後期~古第三紀))
├過去に付加した島弧・背弧系
│└舞鶴帯(ハンカ地塊?)
├高圧型変成帯(沈み込み帯の深部)
│├周防帯(220Ma:ペルム紀~トリアス紀)*以前は三郡に含められていた
│├智頭帯(180Ma:ジュラ紀)*以前は三郡に含められていた
│└三波川帯(90~60Ma:白亜紀後期)
├高温型変成帯
│├阿武隈帯(110~120Ma)*変成ジルコン年代
│└領家帯(85~100Ma)*以前は新期・古期に分けられていた
└北海道の変成帯
├神居古潭帯(145~50Ma)*高圧型:複数の変成年代
└日高変成帯*高温型:東西北海道衝突の際にめくれ上がった大陸地殻
*島弧拡大:湖の形成と海の流入(30~20Ma)、回転(20~15Ma)*押し出し?
・中央構造線やフォッサマグナはこの形成過程で作られた
・15Maでは東北日本の大部分は海没→グリーンタフ堆積
・背弧拡大の原動力は、プリュームの上昇?定説なし?
④島弧の衝突(外来性)
├千島弧
└伊豆・小笠原弧(12Ma~現在)
こうしてみると、日本列島が誕生したのは、つい最近ですね。