2021年5月7日金曜日

表面波の伝播

Hi-net、F-net から表面波を取り出せないか試行錯誤していました。

先日見た時間領域フィルタの文献では、遠地地震で綺麗に表面波が現れていました。
これはS波より遅れて到達する点、継続時間が分~時間単位になる点で、見た目だけでも同定は容易でしょう。が、震源が観測局に近接している場合や微小地震では判定困難。地震分野では、この表面波速度をどのように同定しているのでしょうか?

調べてみると、ありました。

まず、passive な手法。
微動+相互相関を利用した表面波位相速度の推定です。この手法は図書にも載っていました。

・林田ほか「中京堆積盆地における表面波群速度の推定-Hi-net連続地震観測記録を用いた地震干渉法に基づく検証-」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/zisin/66/4/66_127/_article/-char/ja/
・Bruno Goutorbe et al.(2015) Rayleigh wave group velocities at periods of 6–23 s across Brazil from ambient noise tomography
https://academic.oup.com/gji/article/203/2/869/578005 

passive な手法は、土木分野でもハイブリッド表面波探査として利用されています。アレー探査から着想されたのでしょう。また、地震後の剛性回復チェックにも利用されているようです。
このような微動でレーリー波位相速度を求めておき、地盤構成を推定しておけば、地震が起こった際に各周波数で目立つ波がレーリ波かどうかチェックできるかもしれません。

次に、 active な手法。地震動を利用します。土木分野でよく利用されるアクティブ探査と同様の考え方です。違いは1イベントかつランダムな受振点配置。震央距離を利用するようですが、どのように群速度を計算するのでしょうか?

・Corchete V. et al.(2007) Shear wave velocity structure of the Sinai Peninsula from Rayleigh wave analysis
https://link.springer.com/article/10.1007/s10712-007-9027-6
・Dziewonski A. et al.(1969) A technique for the analysis of transient seismic signals.
https://pubs.geoscienceworld.org/ssa/bssa/article-abstract/59/1/427/101646/A-technique-for-the-analysis-of-transient-seismic

前者は以下の2種を組み合わせているようですが、頭がついていきません。
・Multiple Filter Technique (MFT)
・Time Variable Filtering (TVF)

GitHub 上で両者を扱うソースを順に見てみましたが、どれも一長一短。記載通り Python2.7 の環境を作っても動かなかったり、fortran だったり(最初はインタラクティブ希望)、面倒だったり。

ひとまず、弾性波探査のP波のピックアップと同じように、各周波数帯の波形から位相速度を取り出してみることにしました。
が、観測点が100、対象周波数が20あれば、2000個の波形に対してマニュアルピッキングになります。これは非効率。自動でできないかと obspy の Trigger/Picker をいくつか試したものの、どれもイマイチ(そういえば、表面波探査の解析では OYO さんのソフトで自動処理していましたが、どのようにピックアップしていたのでしょう?)。
結局、record section にして直線を引くことで平均位相速度を見出し、それを中心周波数に対してプロットしました。エンベロープを書けば、群速度も得られると思いますが、ひとまずここまで。

手を動かすほど、理解していなかった点、学ぶべき点が見えてきました。
機会があればプロに指導を仰ぎたいですね。

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20210508追記

現代地球科学入門シリーズ6「地震学」
p95-97 「6.6 表面波分散曲線の基づく推定」
・最終的に実施した手法
・鉛直成分でレーリー波、トラバース成分でラブ波を測定
p273-274 「21.2 常時微動の相互相関関数解析に基づく地震波伝播速度の推定
・passive
・地震直後の速度低下とその後の回復


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