2020年7月23日木曜日

リニア中央新幹線 有識者会議

先日、御客様との話の中で、静岡のリニア問題に関する話題が出ました。

これ、詳細な議事録が公開されています。以前より興味があり目を通していたのですが、お客様の中にも気になる方がいらっしゃるようですね。

リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議

議事録を読んだ際に感心したのが以下の点。(第2回議事録)
  • 解析モデルの不確実性ををふまえた上でのリスク管理システムを作っていただきたいと住民側が要望している。
  • 通常は住民側が安全・危険の2択で質問・要望するのに対し、エンジニア側がリスク管理の視点で説明する。しかし、ここでは逆転している(住民側がリスク管理、リスクコミュニケーションの向上をJR東海さんにお願いしている)。
住民側として説明をうけるはずの静岡県が総監技術士の視点で発言しているのに対し、JR東海さんが主に専門技術士の視点で説明しているような異例の流れとして読めます。JR東海さんの地下水解析の委託先は国際航業さんとのこと。リスク対応方針を決める立場ではない担当技術者の心中を察します。
モデルの不確実性については、「地下水モデル」にも書かれていました(備忘録としてまとめた内容はどこかに置いたかな?)。理解できていない部分がまだ残っていますが、大事な内容です。この不確実性の結果も見据えて静岡県にアドバイスされているブレインがいらっしゃれば、その方は優秀です。見習わねば。


もう一点。使用するアルゴリズムへの委員からの指摘です。(第3回議事録)
  • 委員からは、そもそもの解析ソフトももっと最新のもの、国際的なものがあるので、そちらでやって欲しいとの意見を散々申し上げているが、JR東海からは、高橋の方法だとか国鉄時代のものを使用すると言われてしまうので、そうなると私達としても結果を検証できない。
第1回議事録に「水収支モデル(TOWNBY)」の記載があります。これが「国鉄時代」のアルゴリズムです。TOWNBY 以外の新たな手法を要望される方がいらっしゃるのを初めて知りました。この方の仰る国際的なモノとはどれでしょうね。
広域モデルである程度の精度で予測し、その結果を個別の詳細モデルの境界条件として利用し精度向上を図るという2段階手法は常套手段だと考えます。それを100mメッシュ(感覚では広域モデル相当)のTOWNBY のみで説明を通そうとされるのは、確かに乱暴かもしれません。それ故、副知事の仰る不確実性を明記し、それを踏まえたリスク管理が求められるのでしょう(厳しいですが、理解します)。
私なら、詳細モデルとして何を使うでしょうか?おそらく、知り合いの先生のアルゴリズム(浸透流+地表流NS)を利用させてもらえないか、まず相談するでしょうね。ダメなら GETFLOWS でしょうか。高価ですし、自分で修正できないのが難点ですが。
不確実性は統計手法が良いでしょう。浸透流の予測結果に対して実施したことはありませんが、z分布、t分布などを仮定した検定のような手法を当てはめることができそうです。


目指すは専門技術・リスク管理技術の両輪での解決。総監の視点が必要です。
私レベルだと一人で解決に導くことは難しいでしょう。が、技術者としては腕の見せ所です。JR東海さんが合意に向かう道筋を見つけられるよう、今後を期待しています。


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