土砂移動シミュレーションにおいて、その予測は難しいと思います。
過去の再現と今後の予測では同一地形を用いないため、厳密には同一のパラメーターを用いることができません(問題にならない精度の現場が多いように感じていますが)。実務では目的に応じ安全側を配慮して同定値を評価・予測に利用するわけですが、本来なら地形勾配や曲率でパラメーターの相関を探るといった一手間を加える必要があるのでしょう。古い技術ですが、これらに関し十分に議論されてきたとは言えません。まだまだこれからの分野だと思います。
予測は難しいのですが、過去の崩壊の分析には非常に有効なツールだと感じています。
何度か再現解析を行っていくうちに、「ココが先に崩れないと、この堆積形状にならない」「ココの小さなすべりを無視すると、土砂の流下方向が全く異なってしまう」などといった事例に遭遇しています(以前に書き残しているかもしれません)。 つまり、現況再現をする過程で、崩壊の位置・順序などが決まる場合があるのです。
また、崩壊面の位置・形状などといった根本的な3次元地質モデルが、結果を大きく支配することを示しています。地質屋さんの力量が非常に重要になってくるのです。
シミュを行うことで、地質解釈上の2事項のあいまいさが解消します。提示した地質モデルの妥当性と推定したメカニズムの妥当性です。これらを自身で検証できるのです。これは土砂移動のみならず、浸透流や弾塑性シミュなどにも共通します。
言いっぱなしでは技術力の向上は見込めません。観察・推定・検証・修正、これの繰り返しで地質屋になれるのだと思います。
土砂移動シミュ、ありがたく利用しましょう。
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