2025年9月6日土曜日

ポリゴンの崩壊域と流動/堆積域の自動区分

Towards automatic delineation of landslide source and runout - ScienceDirect

AI要約

1. 課題の背景と重要性
従来の地滑りインベントリでは、発生源と流動域が区別されず、一体として記録されることが多いため、予測モデルの精度や体積推定、ハザード評価に悪影響を及ぼしていた。発生源と流動域は力学的特性が異なるため、これらを分離することで、地滑りの発生メカニズムや伝播、堆積パターンなどをより深く理解し、より信頼性の高いハザード・リスク評価、体積推定、運動学的シミュレーションが可能になる。

2. アプローチの概要
モデルは、地滑りのトポロジー情報(形状の複雑さ)と形態情報(物理的な属性)を組み合わせて使用する。これらの特性を特徴量として、機械学習モデル(Random Forest)を訓練し、発生源領域を識別する。

3. 入力データ(特徴量)
モデルへの入力となる特徴量は、主に以下の2種類。

トポロジー特性:
代数トポロジーの手法を用いて、地滑りの地形における「穴(holes)」や「連結成分(connected components)」といった複雑な形状を数値化する。具体的には、パーシステントホモロジー(persistent homology)の概念に基づき、平均寿命(Average Lifetime)、点の数、ベッチ曲線(Betti-Curve)、ヴァッサースタイン振幅(Wasserstein Amplitude)、ボトルネック振幅(Bottleneck Amplitude)などの指標が計算される。これらは地滑りのコンパクトさ、伝播ゾーンの屈曲度、斜面の勾配の変化などを示唆する。最も重要なトポロジー特性には、穴のボトルネック振幅(BA_H)や連結成分の平均寿命(AL_C)が含まれる。

形態特性:
地滑りの物理的属性を示す要素で、ヘイムのエネルギールール(Heim energy line)に基づいた移動距離(travel distance)、移動角度(travel angle)、移動高さ(travel height)、および推定速度(velocity)などが含まれる。これらは地滑りの幾何学から導出され、運動学的指標として機能する。重要な形態特性には、移動距離、移動角度、移動高さ、平均速度が含まれる。これらの特性の中から、相互相関の高いものや特徴量重要度の低いものは排除され、モデルの予測精度を高める上位10の特徴量が特定された。

4. 回帰問題としての定式化
この研究では、発生源領域を地滑り全体の伝播長に対する発生源領域の伝播長の比率として識別する。この比率は、スカープ領域を囲むバウンディングボックスの伝播長と、地滑り全体を囲むバウンディングボックスの伝播長を用いて算出される。回帰モデルの主な目標は、予測された比率と実際の比率との間の誤差を最小化することとなる。

5. モデルの訓練と評価
訓練データ:
ドミニカ、ネパール、トルコ(バルトゥン)、イタリア(ベッルーノ)、日本(新潟)などの地域からの、約30,000の地滑りサンプルを使用してモデルを訓練および評価した。これらのデータセットの一部には、すでに発生源と流動域が分離された「グラウンドトゥルース」が含まれており、モデルのテストと予測精度評価に利用した。

訓練手法:
10 k-fold交差検定を用いた。

精度:
モデルの平均偏差指標は15%未満で、標準偏差は約8%であった。ドミニカで平均10.37%、ネパールで平均7.48%(最も良い結果)、トルコで平均12.30%の偏差を示した。

6. モデルの堅牢性
このモデルは、さまざまな地理的設定やトリガーの種類(降雨、地震、歴史的イベント)の地滑りに対して、発生源領域を高い精度で特定できることが示された。また、スライドやフローといった地滑りの動きの種類の違いに関わらず、発生源領域を効果的に識別できることも示された。

まさかのトポロジー。以前、読んだけど利用していないなと思いつつ、見返すと6年前でした。https://phreeqc.blogspot.com/2020/01/blog-post_24.html

日本のデータも含まれています。が、利用は他国の方。うーん。

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