AI要約
背景
土砂崩れの滑落面の深さや形状、移動した土砂の体積の正確な推定は、災害評価、ボーリング計画、対策のために不可欠である。土砂崩れの滑落面が完全に露出している例は少なく、データ不足の地域では正確な評価が課題となる。これに応じて、コスト効率のよいスプライン補間法を用いた新しい手法が提案された。手法
データ準備:
Hope SlideについてはLiDARデータから取得した8mDEM、Downie Slideについては30mDEMを使用。
スプライン補間法:
滑落面を3Dで再構築するために3次スプライン補間を使用。滑落面の深さや体積を推定するために反復計算を行い、極端な境界条件(谷先、フランク、冠部など)を利用して滑落面の深さや形状を最適化し、滑落面の「最浅」「中間」、「最深」の状態を算出する。既存データ(ボーリングデータ、露出面など)を反映させることで結果の精度を向上させることが可能。
推定処理のステップ:
- Landslide の境界を手動で定義し、その内部を分析領域として設定。
- スプライン関数はx方向(東西軸)およびy方向(南北軸)に設定。必要に応じて座標系を回転させることで、データを地すべり方向に合わせる。
- 対象グリッドノードを一時的に削除し、その周囲の残りデータに基づいて該当部分を再計算する。削除したノードの補間値をスプライン計算に戻し、またその部分を全体の滑落面に統合する。
- 各グリッドノード(i, j)に関して、反復回数 ( t ) 毎に生成されたデータ(例えば標高値 )を前回の結果と比較。推定した滑落面が収束するまでプロセスを反復。
- 確率密度関数(KDE: Kernel Density Estimation)を用いて、滑落面の深さに関する確率を算出。
結果
Hope Slideでは最深の滑落面での体積を65百万m³。既存のドナー指標(Donati, 2019)で示された体積48.4百万m³よりも約25%多い。
露出した滑落面領域をモデルに追加すると、体積が61百万m³となり、精度が向上。
Downie Slideでは最深の滑落面での体積は880百万m³。既存データに基づく過去の推定体積(1000億m³)との比較では、情報不足の下でも信頼性の高い結果を提供可能であった。ボーリング深度を追加してモデルを改良した結果、体積は889百万m³となり、精度が向上した。考察
過去の標準的手法(カットアンドフィル法やGISベースの手法)よりも結果が正確であり、特に滑落面が非露出である場合の精度が向上。
手法は追加データ(ボーリング位置、露出面など)を組み込む柔軟性を持ち、精度をさらに高める可能性がある。
本手法が全てのケースに適用可能ではない点や、結果を解釈する際の注意点(例えば、境界条件の適切な設定)があることに留意する必要がある。
確率分布の表示に惹かれましたが、提案手法(スプライン補間とその反復計算)の過程で得られた値をもとに統計処理(カーネル密度推定等)を行って得られる、手法依存の確率分布でした。手法を適用できることが前提での値であり、実際のすべり面が存在する「物理的な確率」を直接表すものではありません。ま、これはどの手法にも言えるものですけれど。
そうなると、国内ではどの手法(関数)がどのようなタイプの崩壊や地すべりに適用できるか?という整理が必要です。これがないと、3次元形状を推定して3次元の安定解析を進めるにしても、その根拠はこれまで通り「経験」止まりで科学には至りませんし、説明性に劣ります。確率分布も意味のない計算になります。
これは、地質屋さんの出番ですね。
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