H/Vをすべり面深度決定に利用している方がいらっしゃいました。
まずは、H/Vの基本。
中村 (2008) H/V スペクトル比の基本構造
- 軟弱な表層地盤が堅固な地盤上に堆積している状況下では、水平動の増幅現象が重要。
- 地表面と基盤の水平動の比R(=Ahs /Ahb:増幅特性)に及ぼす Rayleigh 波の影響を、地表面と基盤の上下動の比E(=Avs /Avb)で見積もり、増幅特性Am を推定。つまり、地表と基盤のそれぞれのH/V スペクトル比の比によって、より確からしい増幅特性を推定。
- 基盤のH/V スペクトル比が広い周波数範囲で概ね1.0 となる観測事実を考慮すると、結局、表層地盤の増幅特性は、次のように地表だけの測定で推定できることになる。
Am = R/E ≒ Ahs/Avs - F0周辺では SH 波の重複反射による増幅特性を現し、2F0付近ではRayleigh 波によって乱された特性を現す。
H/V の地すべり調査への適用例です。
F. Panzera et al. (2012) Seismic site response of unstable steep slope using noise measurements: the case study of Xemxija Bay area, Malta
- 断面の60mから100mの範囲で、detritus/BCとBC/GLという2つの界面に関連する二峰性のピークがH/Vに存在。
- H/Vを計算する方向性に特徴。
V. Pazzi et al. (2016) H/V measurements as an effective tool for the reliable detection of landslide slip surfaces: Case studies of Castagnola (La Spezia, Italy) and Roccalbegna (Grosseto, Italy)
- f=Vs/(4h)を利用してすべり面深度を推定。
- fはH/Vからの卓越周波数、VsはS波速度。
つまり、岩盤が崩壊したような基盤とすべり土塊のインピーダンスに明確なコントラストがある場合に H/V を地すべり調査に利用できるということです。地すべり土塊と岩盤の間に速度変化がない場合や、深度とともに速度が徐々に増加する場合、この手法を適用することはできません。これは、地質屋さんが現場を見たらある程度判断できますし、ボーリングを掘れば明らかになります。
深度を決定するには Vs が必要です。単点に加えアレーを加えたら良いのでしょう。が、大雑把な手法なので、やりすぎると矛盾が出るでしょうね。ボーリングで確認した深度に一致するよう Vs を調整し、それが妥当な場合に「適用可」と判断するほうが良いのでしょう。
いずれにしても非常に手軽な補間手法です。積極的に利用したいですね。
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