2015年9月9日水曜日

判例

産廃判例訴訟の判例を集めた図書がありました。これがなかなか新鮮です。

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北村喜宣監修「産廃判例が解る」環境新聞社p10-16

民事訴訟:住民が原告の事件

有害物質水道水混入を理由に建設等差止が認められた事例
全隅町安定型処分場建設等差止請求事件

判旨
[1]当該廃棄物処分場に「有害物質」が搬入され埋め立てられることが合理的に予測されるか?
[2]当該廃棄物処分場の「有害物質」が場外に漏出することが合理的に予測されるか?
[3]漏出した「有害物質」が水道や蛇口まで到達することが合理的に予測されるか?


原告が上記3点について合理的に高度の蓋然性をもって疑われる(①~③)ことを立証する必要がある。
被告は下記を立証すべき。立証できない場合は[1]~[3]の法的因果予測の面の証明があったというべきである。
④「有害物質」が搬入されない、。
⑤仮に「有害物質」が搬入されても、埋め立てられない十分な対策を講じている。
⑥仮に「有害物質」埋め立てられても、場外に漏出しない十分な対策が講じられている。

立証事実と立証責任
差止請求者が、どの様な経路でどの程度の量が水道水に到達し、健康被害を摂取者にもたらすものかを、自然科学的論証において必要とされる厳密さをもって特定し、すべてを立証するこは不可能。予測の立証の程度は「通常人が合理的疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる」との判断を示した。[1][2](予測)でなく、①②(蓋然性をもって疑われる)とすることで証明責任を軽減した。

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最初の事例は上記のような内容でした。
面白いと思ったのは、「蓋然性」という語句。技術者は「可能性」「確度」「確率」などという客観的な語句を多用し、「蓋然性」といった主観的な語句をほぼ使用しないと思います(私が国語を知らないだけかもしれませんが)。 便利な言葉です。


次の事例は、「改正共同命令」に適合していない=未処理液の漏出による健康被害の蓋然性が事実上推定される、といったもの。受忍限度を超えるという事実の証明は困難なため、有害物質混入の蓋然性という比較的証明が容易な前提事実からの推定を許すことで、立証負担を軽減するという手法が特徴のようです。これもユニークです。裁判のテクニックだそうですが、ニッチかつディープな世界のようです。


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