2026年1月31日土曜日

LiDARによる土石流観測手法の比較

土研資料Geomorphology文献の違いをAIさんに整理してもらいました。

基本情報
項目土木研究所資料Geomorphology論文
文献名二次元レーザスキャナによる土石流の流量観測手法Monitoring debris flow dynamics: insights from 4D-LiDAR observations in Ohya landslide, Central Japan
発行年2023年11月2025年
発行元/掲載誌国立研究開発法人土木研究所資料 第4445号Geomorphology 482 (2025) 109800
著者今森直紀、清水武志、池島剛、伊藤誠記Tatsuki Kaneko, Fumitoshi Imaizumi, Tomoya Osada, Saleh Yousefi, Shoki Takayama
観測地桜島有村川流域大谷崩れ(Ohya landslide)、静岡県中部
使用機器
項目土木研究所資料Geomorphology論文
レーザスキャナ種類二次元レーザスキャナ(2D-LiDAR)4D-LiDAR(3D+時間)
機種北陽電機 UXM-30LAH-EWALivox Horizon (Livox Corp.)
波長905nm近赤外線レーザ光記載なし
ステップ角0.125度記載なし
測定点数1520点(190度走査)記載なし
測距範囲0.1~30m記載なし
サンプリングレート20Hz(50ms毎)0.1秒間隔(10Hz相当)
測定分解能1mm記載なし
観測システム
項目土木研究所資料Geomorphology論文
走査次元1軸走査(断面計測)3次元走査
設置箇所数1箇所2箇所(Site U: 上流、Site D: 下流)
併用機器非接触型流速計、ビデオカメラビデオカメラ(Sony HDR-CX470、60fps)
電源UPS経由の商用電源バッテリー+ソーラーパネル
データ記録装置ノートPCRaspberry Pi(オンボードコンピュータ)
起動方式常時稼働ワイヤーセンサーによる自動起動
データ保存間隔連続記録1時間間隔のファイル保存
計測・解析手法の比較
項目土木研究所資料Geomorphology論文
計測対象流下断面積(水通し断面)3次元表面形状、縦断・横断形状
座標系極座標→平面直角座標変換極座標→直交座標変換(x:鉛直、y:横断、z:流下方向)
解析ソフトウェアPython 3.9(独自プログラム)CloudCompare (v2.13)、QGIS (v3.16)
ノイズ除去1秒間の中央値抽出(雨滴除去)記載なし
DEM作成記載なし複数のグリッドサイズでDEM作成
地形指標流下断面積のみ勾配、粗度、これらの平均値・標準偏差
流量算出手法
項目土木研究所資料Geomorphology論文
流速計測非接触型流速計(表面流速×3/5)ビデオカメラ+LiDAR(直接計測)
流下断面積LiDARから直接算出(台形公式)LiDARから3次元的に算出
流量計算式Qs = U × Ad詳細な記載なし
時間分解能1秒(中央値処理後)0.1秒
観測対象とする土石流の特徴
項目土木研究所資料Geomorphology論文
流域面積約1.6km²約0.37km²(市ノ沢)
チャンネル特性砂防堰堤水通し(固定床)自然渓流(移動床・固定床混在)
河床勾配記載なし上流部:2537.3°、下流部:1520°
土石流タイプ分類記載なし完全飽和流、部分飽和流
観測イベント数2022年に4回発生中2回計測2023年8月3日の1イベント詳細解析
データ処理・出力の比較
項目土木研究所資料Geomorphology論文
出力データ形式CSV(時刻、平均水位、流下断面積、平均流速、流量)点群データ、DEM、各種地形指標
可視化ハイドログラフ、断面図、アニメーション(mp4)縦断・横断プロファイル、地形指標グラフ
プログラム言語Python 3.9記載なし(CloudCompareとQGIS使用)
公開データプログラムソースコード+計算データ(DVD-R添付)データ公開の記載なし
ライセンスプログラムはCC BY-SA 4.0論文はCC BYライセンス
研究成果・新知見の比較
項目土木研究所資料Geomorphology論文
主な成果・流下断面積の定量的・高時間分解能計測
・夜間・豪雨時の計測可能性
・従来手法との比較検証
・完全飽和流と部分飽和流の形態差異
・表面粗度と乱流の関係
・堆積過程における逆勾配地形形成
流速に関する知見表面流速×3/5を平均流速として使用先端部より後続部の表面流速が高い場合あり
断面形状台形断面として計算凸型断面(部分飽和流)の観測
堆積特性記載なし先端部の堆積が後続流の移動性を低下させる
表面形状指標記載なし勾配・粗度の平均と標準偏差が流動特性を反映
技術的課題と今後の展望
項目土木研究所資料Geomorphology論文
データ取得の安定性・HDD→SSD換装による改善提案
・温度上昇対策
・リモート監視の必要性
・霧・豪雨時の検出範囲制限
・3m以内の点群歪み
・観測継続性の確保
流速計測の課題・1点のみの計測限界
・3D-LiDARへの発展可能性
・0.1秒間隔での粒子追跡の限界
・粒径との相関の課題
維持管理・光学窓の火山灰付着対策
・定期的な清掃(約2ヶ月毎)
・ワイヤーセンサーの設置・維持
・ソーラーパネル+バッテリーの管理
今後の発展・ROSを用いた制御プログラム開発
・降雨連動起動システム
・自然渓流での更なるデータ蓄積
・複数地点での同時観測

文献: Debris Flow + LiDAR +PIV+DNN

High‐Frequency 3D LiDAR Measurements of a Debris Flow: A Novel Method to Investigate the Dynamics of Full‐Scale Events in the Field - Aaron - 2023 - Geophysical Research Letters - Wiley Online Library

https://phreeqc.blogspot.com/2026/01/monitoring-debris-flow-dynamics.htmlの引用文献です。

2025発表となっていますが、YOLO部分がこちらで検討されています。
Deep-Learning-Based Object Detection and Tracking of Debris Flows in 3-D Through LiDAR-Camera Fusion | IEEE Journals & Magazine | IEEE Xplore

AI要約

背景
土石流の破壊性は、粗粒成分(巨礫が豊富な前面)と後続の液状化スラリーの相互作用に強く影響されるが、この相互作用の理解が不十分

過去の研究の限界:
現地での高品質データが不足
前面速度と表面速度の関係が実験室スケールでは観察されているが、現地スケールでは未確認
垂直速度分布の形状と進化に関する理解が乏しい
研究の必要性:数値モデルや物理モデルを制約するための高時空間分解能の現地データが必要

手法
観測地点
場所:スイス・ヴァレー州のIllgraben土石流観測ステーション
既存設備:ジオフォンアレイ、レーダー、超音波・レーザー機器、力板、複数のビデオカメラ観測イベント:2021年9月19日に発生した約30分間の土石流
LiDAR計測システム
使用機種:Ouster OS1-64 Gen. 1
設置位置:河道中央の堰堤上方6 mに設置
仕様:
視野角:33.5°
空間分解能:64スキャンライン
時間分解能:10 Hz(1秒間に10スキャン)
1ラインあたり2,048点
トリガー:上流のジオフォンによる起動
電源の種類:記載なし

データ処理手法
特徴検出と追跡
Matlabツールボックス"groundTruthLabeler"を使用して3Dバウンディングボックスで手動ラベリング

自動速度推定: 2つの方法を開発
ヒルシェード法:点群をヒルシェード投影し、PIV(粒子画像流速測定法)で2D速度場を導出後、3D速度に投影
LiDAR-カメラ融合法: ビデオデータにPIVを適用し、LiDARとカメラの変換を推定して3D速度場を取得
全自動速度は2秒移動平均で平滑化

機械学習による粒子検出: YOLO-v5をベースとした畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練し、ビデオ映像から礫と木質残骸を自動検出(精度0.8、再現率0.6)

流動深さと前面軌跡
イベント前の河床標高とLiDAR計測データの差分から垂直流動深さを推定
前面位置を約2秒ごとに特定し、前面および後方(2 m、6 m、10 m)の表面速度を抽出

結果
先端部と表面速度の関係
先端速度は砂防ダム付近で約0.8 m/s、上流で約2 m/sに変化
先端後方6〜10 mの表面速度は先端速度の約1.5〜2倍で、先端に近づくと減速
先端が砂防ダムに接近して減速する区間(01:53〜01:55分、センサーの6〜7 m上流)では、横断方向の速度勾配が発生し側堤が形成・再移動

流動深度と速度の時間変化
先端通過後、流動深度は最大1.5 mに達し、その後速度と礫検出数とともに徐々に減少
y = 16 mからy = 5 m(砂防ダム方向)にかけて流動深度が顕著に減少(水理学的ドローダウン効果)
イベント開始約7分後に第2のサージが到達し、流動深度と速度が15秒間増加(「速度ジャンプ」)

個別粒子の運動
29個の地物(木質残骸9個、転がる礫20個)を手動で追跡
速度ジャンプ前: 転がる礫と木質残骸はほぼ同速度で移動
速度ジャンプ後: 転がる礫の速度は木質残骸の約0.6〜0.7倍に低下
先端部の礫は30 m区間全体で追跡可能で、再循環していないことが示唆された

考察
方法論的意義
空間・時間分解能:従来研究より1桁以上高い分解能を達成
新しい視点:前面維持・伝播、サージ発達、垂直速度分布に関する新たな知見

前面維持メカニズム
表面速度>前面速度:後方の表面速度が前面速度の1.5倍で、巨礫が前面に優先的に移動
巨礫の挙動:
前面に接近すると減速し、到達後は前面の一部となるか堤防を形成
再循環は発生しない(従来の実験・数値研究と異なる)

メカニズムの解釈:
前面の巨礫サイズが流動深さと同程度
前面が「ふるい」として機能し、水と細粒粒子を逃がす
間隙水圧の排水により、巨礫が前面に到達すると速度が低下
後続物質に押されて転がりと滑りの複合運動

垂直速度分布の時間変化
観測の解釈:異なるサイズの特徴(コブル、巨礫、樹木)が異なる深さまで達し、垂直速度分布の異なる位置をサンプリング

速度ジャンプ前:ブロック滑り型速度分布
速度ジャンプ後:内部せん断を伴う速度分布(単純せん断とブロック滑りの中間)

転がる巨礫と木質デブリの速度比0.6~0.7
遷移の特徴:15~30秒の間に急激に発生

制御要因:
粗粒粒子の濃度(流動深さに近いサイズの粗粒粒子は垂直せん断を抑制)
含水量の変化
水理学的効果
堰堤上流の流動深さ減少:約15 m上流まで水理的引き下げ効果が影響

今後の考慮事項:フルード数依存性

限界と今後の研究
本研究の限界:単一イベントの観測
今後の必要性:同じ観測システムでの追加イベントデータ収集による一般性の確認

巨礫と木などの位置と大きさの違いから、深度方向の速度プロファイルを推定する工夫が新規性でしょうか。LiDARの普及が現象を正しく理解する一歩につながるのかもしれません。

文献: Debris Flow + LiDAR

Monitoring debris flow dynamics: insights from 4D-LiDAR observations in Ohya landslide, Central Japan - ScienceDirect

土石流の形状をLiDARで取得する研究です。国内では土研さんがまとめていらっしゃいましたね。

AI要約

背景・研究目的
土石流は破壊力、高速度、長距離流下を特徴とし、重大な災害をもたらす。従来の観測手法(水圧センサー、ビデオカメラ、ステージセンサー、地震計など)では、土石流の急速な時空間変化を十分に捉えられなかった。
近年、自動車用LiDAR技術の進歩により、4D-LiDAR(3次元+時間)観測が可能となった。スイスのIllgrabenなどで先行研究があるが、主に砂防堰堤間での観測に限られており、自然河道での流動特性は未解明であった。

研究目的:
自然河道を流下する土石流サージの4次元形態と流動性の解明
流動表面の形態分析による流動状態(巨礫の混入、層流・乱流状態)評価の適用可能性の検討
土石流停止段階における動態の解明

調査地
場所: 日本中部の大谷崩れ地すべり跡地、一ノ沢流域
標高: 1205〜1905 m
流域面積: 0.3 km²、全流路長1000 m
年間降水量: 約3400 mm
土石流発生頻度: 年平均5回(2016〜2023年)
地質: 中新世の砂岩と破砕された頁岩の互層

観測機器・手法
4D-LiDARシステム
土石流が到達すると自動的に観測が開始され、0.1秒間隔で連続的に3次元データを記録するシステム
LiDARセンサー: Livox Horizon (Livox Corp.製)
設置地点: 上流地点(Site U)と下流地点(Site D)の2箇所
設置時期: 2023年5月
起動システム: ワイヤーセンサー + プログラマブルリレー(Omron ZEN)
制御: オンボードコンピューター(Raspberry Pi)
電源: バッテリー + ソーラーパネル + チャージコントローラー
記録時間: 土石流到達後最低2日間の連続観測
データ保存間隔: 1時間ごと
点群密度: 0.0375 pts. cm⁻²

ビデオカメラ
機種: Sony HDR-CX470
レームレート: 60 fps
解像度: 1920×1080ピクセル
設置: Site UとSite Dの両地点
用途: LiDARデータの検証、粒径測定、流動状態の判別

UAV測量
機種: DJI Phantom 4 RTK
飛行高度: 地上50〜100 m
点群間隔: 0.02〜0.10 m
DEMグリッドサイズ: 0.1 m
ソフトウェア: Agisoft Metashape(SfM解析)
GNSS: Hemisphere A52、R320

データ解析
ソフトウェア: CloudCompare (version 2.13)、QGIS (version 3.16)
分析対象: 0.1秒間の点群データから縦断・横断図、DEM作成
分析範囲: Site D: 2.0 m×2.0 m、Site U: 1.5 m×1.5 m

表面形態分析
異なるグリッドサイズのDEMから以下を算出:
勾配: Horn (1981)の式を使用
粗度: 3×3グリッド内の最大標高差(Wilson et al., 2007)
統計値: 平均値と標準偏差

結果
観測された土石流イベント
2023年8月3日の土石流
降雨: 総雨量66 mm、最大10分間雨量11 mm(66 mm/h相当)
観測地点: Site Uのみ(下流まで到達せず)
サージ数: 8回(16:37〜16:50)、うち6回をLiDARで捕捉
流動深: 約0.5〜2 mで急激に変動
流動タイプ: 全てのサージで部分飽和流の後に完全飽和流が続いた
河床変動: 16:38に堆積、16:40と16:43に侵食を確認

2023年8月14日の土石流
降雨: 総雨量242 mm、最大10分間雨量11 mm(66 mm/h相当)
Site U: 21:00〜21:07に2回、21:30〜21:45に8回のサージ、その後2 m以上の侵食
Site D: 21:41に明確なサージと堆積を検出
UAVデータ: 上流の発生域で3 m以上の侵食を確認
Site U周辺: 上流・下流約100 mにわたり3 m以上の侵食
Site D周辺: 上流30 m〜下流100 mにわたり3 m以上の堆積

流動形態
縦断・横断形状
8月3日、Site U、16:39の最長サージ:
先端部(1〜2秒): 横断面が凸型、縦断面は土石流ローブ状、部分飽和流
後続部(3〜5秒): 横断・縦断とも滑らかなプロファイル
凸型の出現: 6回のサージ中3回で確認
凸型から滑らかへの変化: 流側への堆積と関連

8月14日、Site D:
凸型の横断面は観測されず
最大サージの先端部でスプラッシュを確認
完全飽和流または高濃度流が卓越

表面形態の定量分析
勾配の平均値
先端・中部: グリッドサイズ0.06 mまで減少傾向、以降安定
後部: グリッドサイズに関わらずほぼ一定、先端・中部よりやや小さい

ビデオカメラから得た平均粒径(0.15〜0.30 m)と標準偏差の収束値がほぼ一致(後部を除く)
粗度の平均値: 全区間でグリッドサイズに比例して増加
粗度の標準偏差: 先端・中部: 全体的に後部より小さい値
グリッドサイズ<0.10 m: 中部>後部>先端
グリッドサイズ>0.10 m: 後部で増加傾向、先端・中部は増加せず

粒径と形態指標の相関
積分値と粒径: p=0.06(有意ではないが傾向あり)
積分値/最大グリッドサイズと粒径: p=0.02(有意な相関)
グリッドサイズ0.10 mの標準偏差と粒径: 相関なし(p>0.10)

堆積過程
8月3日、Site U、16:38:
縦断方向約12 mにわたり堆積
逆勾配を形成し、10秒間でバックステッピング
約1 mの堆積高
先端部が土石流到達前の縦断プロファイルとほぼ平行

8月14日、Site D、21:41:
縦断方向約8 mにわたり堆積
逆勾配を形成し、20秒間でバックステッピング
堆積先端部が到達前のプロファイルとほぼ平行、後部で逆勾配が顕著
堆積速度: Site Uでは縦断方向に一定、Site Dでは4〜8秒後に大量堆積、その後減少

考察
流動特性
横断面形状の違い
部分飽和流の凸型形状: 河岸との摩擦影響が少ない中央部での選択的流動が原因
完全飽和流での凸型の不在: Site Dでスプラッシュのみ観測
内部力の違い: 部分飽和流は摩擦力が支配的(Oya et al., 2024)、凸型形成には摩擦力の優位性が必要

表面形態指標の解釈
勾配・粗度の標準偏差が後部で高い理由: 飽和流の乱流による表面擾乱ビデオ画像との比較: 先端部は巨礫で覆われた層流、後部は泥水主体の乱流
粒径の影響: 部分飽和流で巨礫に完全に覆われている場合、粒径も勾配の標準偏差に影響
点群密度の制約: 0.0375 pts. cm⁻²は不十分、Wang et al. (2013)は直径>63 mmの巨礫測定に1 pts. cm⁻²が必要と報告
0.1秒間隔での巨礫移動: ビデオ画像から求めた粒径との相関が低くなった原因

グリッドサイズの影響
小さいグリッドサイズ: 先端・中部・後部の違いが不明瞭
乱流の捕捉: 十分大きいグリッドサイズが必要
粒径分析: グリッドサイズが粒径より大幅に大きいと個々の粒子の影響が不明瞭
結論: 研究対象の特性に応じた適切なグリッドサイズの選択が必要

イベント特性
流下距離の違い
8月3日: 下流Site Dに到達せず、短い降雨(2.3時間)、部分飽和流が卓越
8月14日: 下流まで到達、長い降雨、完全飽和流が卓越

流動性の違い: 部分飽和流は間隙が完全に流体で満たされていないため、粒子間および流れと河道間の摩擦が増加し、流動性が低い(Major, 1997, 2000; Major and Iverson, 1999)

8月14日の高い流動性: 上流での2 m以上の侵食により大量の土砂供給、河道勾配の減少に伴う流動性低下を補完

堆積特性
逆勾配地形の形成: 堆積先端部が元の河床に対して逆勾配を形成
バックステッピング: 逆勾配が後続流の流動性を低下させ、河道での土砂の後方充填をもたらす
堆積速度の違い: 土石流の内部力の違いを反映、今後の物理メカニズム議論に活用可能

結論と今後の課題
成果
4D-LiDAR観測により以下が明らかになった:
流動高の空間的変化は土石流表面形態より河床形態に影響される
完全飽和流と部分飽和流で縦断・横断形状、表面形態、堆積特性が異なる
表面形態(勾配・粗度の標準偏差)から乱流状態や粒径の評価が可能
堆積先端部の逆勾配地形が後続流の流動性を低下させ、バックステッピングを引き起こす

限界と課題
時間解像度: 0.1秒間隔では急速な変化を見逃す可能性
点群密度: 0.0375 pts. cm⁻²では粒径分布評価の精度に限界
補完データの必要性: 地盤振動計、地震計、光ファイバーなどとの統合が望ましい
高密度・短間隔データの必要性: より詳細な粒径分布と表面形態の解明に必要

応用可能性
警報システムでの土石流検知
河川管理における河床レベル監視
災害軽減への貢献


ラズパイでも消費電力はそこそこありますし、LiDARを連続で動かして、となるとかなりの電力が必要でしょう。ソーラーパネルとバッテリーは大きなものになりそうです。林の中では難しそうです。2日毎にバッテリー交換という計画も現実的ないでしょうから、連続観測を実施したい場合は商用電源を引くしかないでしょうか。

2026年1月28日水曜日

水理公式集例題集2024

 これもプロに教えていただいたのですが、水理公式集例題集のプログラムがGitHubで公開されていました。1年間、気づきませんでした。

土木学会2024年12月新刊のご案内『水理公式集例題集(2024年版)』 | JSCE.jp for Engineers

地下水流動はFortranのままでしたが、不定流は Python になっていました。時代でしょうか。

不定流、厳しい条件だと振動していましたが、コンパイルせずに試せるようになったのはGood!お手軽に試すことができるようになりました。

摩擦項の半陰解法

前回の続きです。

1次元なのに発散することがあり、試行錯誤した結果、下記で安定しました。1次元だと思って舐めていました。

空間離散化

連続式: Upwind法(流れ方向に応じた風上差分)
運動量式: 中心差分

時間積分
連続式: 陽解法
運動量式: 半陰解法(Semi-implicit法)

効いたのは摩擦項への半陰解放の適用。摩擦項Sfの非線形性により陽解法では不安定になりやすいため、以下の線形化を実施しました。

Manning式のSfを現在の流速u_iの周りでTaylor展開:
Sf(u) ≈ Sf(u_i) + (u - u_i)·∂Sf/∂u|_{u_i}
     = Sf_const + Sf_coef·(u - u_i)

ここで:
Sf_const = n²·u_i·|u_i| / Rh^(4/3)          (定数項)
Sf_coef  = 2·n²·|u_i| / Rh^(4/3)            (線形係数)

運動量式の離散化
元の式:
∂u/∂t + u·∂u/∂x = -g·∂h/∂x + g(S₀ - Sf)
離散化:
(u_new - u_i)/dt + u_i·du_dx = -g·dh_dx + g·S₀ - g·Sf

線形化した摩擦項を代入して整理すると:
u_new·(1 + dt·g·Sf_coef) = u_i - dt·(u_i·du_dx + g·dh_dx - g·S₀ + g·Sf_const - g·sf_coef·u_i)
u_new = RHS / (1 + dt·g·Sf_coef)
RHS = u_i - dt·(u_i·du_dx + g·dh_dx - g·S₀ + g·Sf_const - g·sf_coef·u_i)

あとでプロと話していたら、1次元で不安定になりやすいのはやはり摩擦項で、半陰解法を用いて安定化させるのは実務でよくやる対応らしいです。1次元だから皆さん同じ方向に向かうのかもしれません。

2026年1月24日土曜日

1次元浅水流方程式の表現

1次元浅水流方程式(Saint-Venant 方程式) を用いて、矩形断面開水路における非定常流れを計算しました。上流端から一定時間流量を与えた後、流入を停止した際の流量減衰曲線(Recession Curve) をいくつかの条件で見てみたかったのです。

連続式と運動量式を組みあわせるだけなのですが、いくつかの表現があります。

連続式(質量保存則)
∂A/∂t + ∂Q/∂x = 0
∂h/∂t + ∂(uh)/∂x = 0
∂h/∂t + (1/B)·∂Q/∂x = 0

ここで、 h : 水深 [m]、u : 断面平均流速 [m/s]、Q : 流量 [m³/s]、A : 流水断面積 [m²] (= B·h)、B : 水路幅 [m]、t : 時間 [s]、x : 流下方向距離 [m]

 運動量式(運動量保存則)
∂Q/∂t + ∂(Q²/A)/∂x = -gA·∂H/∂x + gASf
∂Q/∂t + ∂(Q²/A)/∂x = -gA·∂h/∂x + gA(S₀ - Sf)
∂u/∂t + u·∂u/∂x = -g·∂h/∂x + g(S₀ - Sf)

ここで、g : 重力加速度 = 9.81 m/s²、H : h+z [m]、S₀ : 河床勾配(正:下流に向けて下がる)[-]、 Sf : 摩擦勾配(エネルギー線勾配)[-]

摩擦勾配 Sf は Manningの粗度式で表されます。
Sf = (n²·|u|·u) / R^(4/3)
Sf = (n²·Q·|Q|) / (A²·R^(4/3))

ここで、n : Manningの粗度係数 [s/m^(1/3)]、R : 径深(潤辺)[m]

矩形断面の径深
R = A/P = (B·h)/(B + 2h)
幅広水路(B >> h)の場合
R ≈ h

数学ではいずれも等価なのですが、時間方向に陽解法を用いると微妙に結果が異なることもあります。一番計算手順が少なくなる(誤差の積み重ねが少なくなる)表現を選択するのが良いのでしょう。


2026年1月15日木曜日

集水井の目詰り

土研さんから集水井の目詰りに関する資料が出ていました。

茶臼山地すべりの集水井における集水ボーリングの目詰まりの実態調査-論文・刊行物検索-土木研究所

2年間にわたり、目詰りの様子を写真に撮られていました。反応速度論も議論できるかなと思いつつ見ていたのですが、残念ながら一気に詰まっていました。
水質はグラフと最大、最小、平均値で示されています。どの最大値かなと迷いましたが、平均値があるので、おそらく時期はバラバラで各項目の最大値なのでしょう。現在の地すべりの専門家は水質に興味がないのかもしれません。
グラフを見る限り水質はあまり変化していなさそうでしたので、昔の文献を探れば平均的な水質は分かりそうでした。が、文献を孫引きしても水質は載っていません。おそらく、引用を間違われたのでしょう。多分、これです。残念ながらこちらにはFeが載っていませんでした。
茶臼山地すべり地上部の地下水について(II)

目詰りの有無については、沈殿量を計算すればある程度目安が付くと考えています。以下は2010年ですから、もう15年前。これにも書いていますが、地すべりの場合は詰まるとわかってもそこに打つしかないので、進展がないのも仕方がないのでしょう。
https://phreeqc.blogspot.com/2010/12/2.html
この1つは土研の方が書かれていましたが、水質の情報が揃っています。昔の地すべりの研究者は基礎を疎かにされていないようで、見習わねばなりません。

この集水井の目詰りの研究?、今後どのような着地を見せるのでしょうか。