2026年2月23日月曜日

文献:Landslide susceptibility zoning through physically-based limit equilibrium method modelling

Landslide susceptibility zoning through physically-based limit equilibrium method modelling - ScienceDirect

AI要約

背景
 地滑りは世界で最も普及している地形学的災害の一つであり、気候変動による豪雨の増加に伴い、その頻度が高まっています。被害軽減や都市計画のためには、特定の地域での発生可能性を示す地滑り感受性(LS)の評価とマッピングが不可欠です。従来の評価手法には、主観的な定性的手法と、統計的または物理学的な定量的手法があります。統計的手法は広域評価に適していますが物理的プロセスを直接考慮せず、物理モデルは詳細な地盤データが必要なため広域適用が困難という課題がありました。本研究は、これらを克服する新しい広域物理モデル手法を提案しています。

手法
本研究では、GeoPhyLS(Geospatial Physically-based Landslide Susceptibility)と呼ばれる手法を開発しました。この手法は以下の4つのコードブロックで構成されます。

1. Extractor(抽出器): DEMから排水路に基づいた Half-Basins (HB) を作成し、各HB内で斜面方位(モーダル値および±45度)に沿った2次元断面を自動生成します。これに地質図に基づく力学パラメータを割り当てます。

• ハーフ・ベイスン(HB)の活用: 地形を、尾根線(分水嶺)から排水路(流路)までの単位である「ハーフ・ベイスン」に分割します。これは地形的に意味のある単位でモデルの境界を定義するためです。計算効率を最適化するため、ユーザーはDEMの解像度を調整したり、HBのサイズを選択したりできます。

• 断面方向の決定: 各HBにおいて、地形の方位(アスペクト)の最頻値(モード値)と、そこから±45度変化させた計3つの方向に沿って断面線を引きます。これは、単一の方向だけでは「最も急な斜面」や「最も重大な崩壊方向」を見逃すリスクがあるため、包括的に斜面を調査するための工夫です。

• パラメータの統合: 断面上の各点には、地質図から抽出された**有効粘着力(c')、有効内部摩擦角(φ')、単位体積重量(γ)**などの力学パラメータが割り当てられます。最終的に、解析ソフトウェアCSSAPで読み込み可能な形式(.dat, .geo, .fld, .utm, .modファイル)として出力されます。

2. Analyser(分析器): SSAP2010ソフトウェアを用い、2次元極限平衡法(LEM)ランダムサーチアルゴリズムの使用で、滑り面の形状(円弧、平面、複合線)を事前に仮定せずに探索し、局所的な安全率(SF)を算出します。 

• SSAP2010の使用: 2次元LEM解析ソフトSSAP2010のコマンドライン版(CSSAP)を使用し、並列処理によって数百から数千の計算タスクを高速に処理します。

• ランダムサーチアルゴリズムの革新性: 本手法の最大の特徴は、滑り面の形状を事前に仮定しない点にあります。従来のモデルが円弧や平面を仮定するのに対し、このアルゴリズムは円弧、平面、さらには「複合線(mixed-line)」を含む任意の形状の滑り面を自動的に探索します。これにより、浅い崩壊から深い崩壊まで、多様なメカニズムをバイアスなしに評価できます。

3. Interpolator(補間器): 各断面の最小局所SF値をグリッドノードに抽出し、IDW法で領域全体に空間補間してSFマップと滑り面深さマップを生成します。

4. Classifier(分類器): SFを単なる絶対値ではなく「不安定指数」と見なし、観測された地滑りデータを用いたロジスティック回帰分析によって、SFを発生確率としてのLSへ変換・分類します。

結果
イタリア南部のボヴィーノを対象とした適用では、地盤物性と水文条件を組み合わせた複数のシナリオ(最悪・妥当・最良)を分析しました。

• 水文条件(Hydraulic settings):
 Saturated(飽和): 地下水位が地表面にあると仮定した「最悪」の条件。
Dry(乾燥): 地下水を考慮しない「最良」の条件。

• 地盤物性条件(Geomechanical parametrisation):
イタリア全土のデジタル地質図(Bucci et al. 2021, 2022)に基づき、対象地域を以下の4つのリソタイプ(岩相)に分類しました。
• 沖積堆積物 (Al)
• フリッシュ / 珪質砕屑性堆積岩 (Ssr)
• 固結砕屑岩 (Ccr)
• 未固結砕屑岩 (Ucr)

広域にわたる詳細な地盤データの不足を補うため、以下のソースからパラメータを取得しました。
• フリッシュ (Ssr): ボヴィーノ南部の斜面で行われた14本のボーリング調査、および深さ3〜20mから採取された不攪乱試料に対する23の室内試験(三軸圧縮試験、直接せん断試験)の結果に基づく学術文献から抽出されました。
• その他の地質単位: 既存の地盤工学データベース(GeoSTRU 2015; Monte et al. 2024a, b)からデータを収集しました。

詳細な層序情報が全域で得られないため、以下の3層構造をモデルとして仮定しました。
• 第1層(地表〜3m): 浅い層を代表させるため、下層よりも低い強度パラメータを割り当てました。
• 第2層(3m〜25m): 文献やデータベースから得られた値を直接割り当てました。
• 第3層(25m以深): 一律に基盤岩(Bedrock)と見なし、非常に高い強度値を設定しました。

地盤物性の自然なばらつきや不確実性に対応するため、単一の平均値ではなく、「最小値(Min)」「平均値(Avg)」「最大値(Max)」の範囲を定義し、以下の3つのシナリオを設定しました。
• 最悪(Worst): 強度パラメータ(c ′ ,ϕ′ )に最小値を適用。
• 妥当(Plausible): 平均値を適用。
• 最良(Best): 最大値を適用。

乾燥状態かつ強度が低い「最悪シナリオ」AUC(受信者動作特性曲線下面積)が0.82と最も高い識別能力を示しました。 

考察
本手法は、従来の無限長斜面モデルでは困難だった多様な滑りメカニズムの評価を広域で可能にしました。SFを確率的なLSに変換することで、シナリオ間の不確実性を考慮しつつ、一貫した感受性パターンを特定できています。既存の統計的手法(LAND-SE)との比較でも同等以上の性能が確認されており、地盤データが限られる広域評価において物理モデルを活用する強力なツールとなります。今後は過去の地滑り履歴が及ぼす影響の統合などが課題です。


土質に応じたパラメータを3ケース設定し、ロジスティック回帰で安全率をLSに変換。 安定エリア: 「0」、 不安定エリア(地滑り地点):「1」としてAUCを計算、といった流れです。物理モデルベースなので、説明性が高いのが特徴です。これにSFやパラメータの取り得る確率が入れば完璧でしょうか。

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