2026年1月4日日曜日

因果推論と機械学習 その2

 S-、T-、X-Learner は meta-learner(メタ学習器)と呼ばれる枠組みに属し、機械学習による因果推論を実現する基本的アプローチのようです。X は比較的新しいとのことですが、SとTは古くから利用されています。

これらは「条件付き平均処置効果(CATE)」を推定するための推論フレームワークで、「もしこの人、モノ、事象に介入したら、しなかった場合と比べてどうなるか?」という効果(潜在的結果)を、観察データ(処置+特徴量+結果)から推測・推定する方法です。S, T に最新の機械学習フレームワークを組み込むことで発展し、推定精度も向上するのでしょう。

2. Meta-Learner

Learner step モデルNo. 説明変数 目的変数 推定対象
S-Learner 1 1 (T, X) Y 処置 T と特徴量 X が与えられたときの結果 Y の期待値(平均値); μ(T,X)=E[Y|T,X]
2 CATE 条件付き平均処置効果; τ(X)=μ(1,X) − μ(0,X)
T-Learner 1 1a X (T=0) Y 対照群(処置なし)における結果 Y の期待値; μ₀(X)=E[Y|T=0,X]
1 1b X (T=1) Y 処置群(処置あり)における結果 Y の期待値; μ₁(X)=E[Y|T=1,X]
2 CATE; τ(X)=μ₁(X) − μ₀(X)
X-Learner 1 1a / 1b X (T=0) / X (T=1) Y T-Learner と同じ(μ₀, μ₁)
2 対照群の補完効果(反事実予測 − 実際の結果); d₀ = μ₁(X) − Y
処置群の補完効果(実際の結果 − 反事実予測); d₁ = Y − μ₀(X)
3 2a X (T=0) d₀ 対照群で学習した補完効果の条件付き期待値; τ₀(X)=E[d₀|X]
3 2b X (T=1) d₁ 処置群で学習した補完効果の条件付き期待値; τ₁(X)=E[d₁|X]
4 CATE; τ(X) = e(X)·τ₀(X) + (1−e(X))·τ₁(X)
元の式は τ₁ と τ₀ の重みが入れ替わっていた。原典 Künzel et al. (2019, PNAS) は τ̂(x)=g(x)·τ̂₀(x)+(1−g(x))·τ̂₁(x)、g には ê(x) を充てる。

用途

Learner モデル数 向いている場面 弱点
S-Learner 1 処置の効果が大きく、共変量が少ないとき。実装が最も簡単 T が多数の特徴量に埋もれ、正則化で処置の効果ごと消えることがある(τ≈0 に潰れる)
T-Learner 2 両群とも標本が十分あり、応答関数の形が群で大きく違うとき 群ごとに独立に学習するのでデータ効率が悪い。片方の群が小さいと、その側の誤差がそのまま差に乗る
X-Learner 4+e(X) 群サイズが大きく偏るとき(例: 崩壊ありが少数)。少数側の情報を多数側のモデルで補える 段数が多く誤差が伝播する。傾向スコアの推定精度に結果が依存する

  • S-, T-はモデル(応答関数)で潜在的結果を推定(期待値として算出)し、後処理としてCATEを算出。X-はモデルでCATEを推定。
  • e(X)(傾向スコア)は全体比率で代用するか、X→T のモデル(分類器)で推定する。X-Learner では step4 の合成に、 DR / DML 系では擬似効果・残差化に用いる。

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20260817 追記・修正

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