第43回地質調査総合センターシンポジウム「地質を用いた斜面災害リスク評価-高精度化に必須の地質情報整備-」で千木良先生の発表を拝聴しました。
- 能登地震でのある崩壊の素因として、パミスを含んだ厚さ5㎝程度の層が挙げられる
- しかし、産総研の地質図に描かれるスケールではない
これまで全国の災害データの地質的素因をシームレス地質図を利用して分析してきましたが、がけ崩れ、土石流には大きく影響しませんでした(地すべりには地質が効きます)。純粋な地質のみでなく、複雑性や断層からの距離等の特徴量も作成しましたが、機械学習モデルが重要とは判断しませんでした。これは、崩壊データではなく、災害データだから(人の活動が影響する)というのが主要因ですが、上記も大きく影響しています。地質は影響する。しかし、あなたの地質図の選択が悪い、という事実を突き付けられているのです。
1つの崩壊、すべり毎に素因を抽出し、それを地道に、年月をかけて積み重ねる。数が集まったら、そこから共通性や特異性を見出すのが研究の基本手順なのですが、近年の研究ではその過程をすっ飛ばし、結果を早急に示しがちに思えます。手元にある災害データ、広域で使える均質な地質図、それらから得られた結果はどれほどの信頼性があるのでしょうか。「ないものは仕方がない」ではなく、ないから作る、積み重ねるのが研究であり研究者でしょう。目に見える成果や時短に迫られる立場もわからないではないのですが。
Landslide Sasceptibility Map を広域で作るのが他国で流行っています。「ひとまずやってみた」レベルが多いのですが、手法は着実に進歩しています。それに投入する特徴量の質が上がれば、信頼性もぐっと上がるでしょう。将来の方のために地味な仕事も積み重ねていきましょう。
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