2024年12月31日火曜日

やり残し事項 2024

昨年度やり残した短期目標「優先度高:機械学習のスキル増強」「優先度中:DAS」は完了です。我乍ら、うまくいきました。

中期目標も順調な滑り出し。非常に優秀な後輩君が走り出し、安全管理や解析スキル等をスポンジのように吸収しました。GPTがすぐに使える環境があったこと、その精度がこの1年でかなり高くなったことも効率良く彼が育った要因の一つでしょう。時代とともに、育成方法も変化するのですね。さらに育ってもらうためには、相応の場の提供が必須です。プレッシャーです。


やり残し事項は優先度低のみ。

優先度低:流体+個体(不連続体+連続体)+振動
優先度低:Dtransu の MPI/GPU 対応
優先度低:地表流+地下水+移流拡散

SLBL

地すべりのすべり面を3次元で表現する場合、ボーリングで決定した深度と平面ブロックの位置を通すようにサーフェスを作成します。

ボーリングがない場合、あるいは地震後など多数のすべりが発生した場合に、尤もらしいすべり面を作成したいということもあるでしょう。精度が悪くとも、GIS等で広域かつ一括処理できれば便利です。

SLBLという手法を最近知ったのですが、これが手軽でしょう。
作成される深度に地質的な根拠はなく、処理も周辺4~8方向の高さを使用するだけで非常に単純なのですが、経験的におかしくない面を作成できそうです。公開されているArcGISのプラグインは不安定でしたが、うまく動いた時の結果だけを見ると、それなりに使えそうな考え方でした。
近年ではInSARと組み合わせてキャリブレーションしようとする方もいらっしゃるようです。国内では、そこまで大きなすべりは扱わないでしょうかね。

GPTでも組めそうな程度の内容です。活用してみましょう。

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20250105 追記

SLBL なら csv のみで処理できるでしょう、と自分で組んでみました。
ポリラインで地すべり範囲を囲まず、 csv 全体を作成対象とすると、接谷面図のような結果になります。山頂の尾根部にも面ができてしまうので、囲まないとダメなのでしょう。
ま、これはこれで使えそうですが。

2024年12月25日水曜日

反応経路モデリング

Fluid-rock reaction path modeling of uranium mobility in granite-related mineralization: A case study from the Variscan South Armorican Domain - ScienceDirect 

PHREEQC を用いてバッチ試験を繰り返すことで概念モデルの妥当性を検証した内容です。水‐熱のシミュレーションはすでに実施済みのようで、残された反応部分の報告です。あえて kinetic model を使用せず、扱いやすいバッチ試験を利用されている点では、実務上の利便性が高いと言えます。

この報告、水質計算に目が行きがちですが、地質屋さんとして難しいと感じるのは岩石側、鉱物構成の設定でしょう。地下深い場所の鉱物構成をいかに尤もらしく設定できるかがポイントです。計算で水質を再現できると、設定の妥当性が高くなると考えることもできます。このトライ&エラーは Geochemist しかできないでしょう。

固液比については、感度分析のように複数実施した結果から、尤もらしい設定を採用するだけですので難しくはないでしょう。ただ、浸透流の結果との整合性を考えるのは難しいでしょうね。バッチ試験ですから余計に。

実務では源泉への影響調査などに適用できそうです。一つのベンチマークになりそうな文献です。


2024年12月24日火曜日

SBAS 自動解析

Automated Python workflow for generating Sentinel-1 PSI and SBAS interferometric stacks using SNAP on Geospatial Computing Platform - ScienceDirect

PS と SBAS の自動解析スクリプトを作成したよ、という内容です。コードは公開されており、私の環境でも少しの修正で動きました。

文献にも書かれていますが、時系列変位の整理までは実施してくれません。データもローカルにダウンロードしてから計算されますので、時間がかかります。必要となるストレージサイズも大きくなるなため、個人的にはLiCSBASなどの他のコードの方が魅力的でした。

SBASベースの手法には、多くの種類があります。近年ではMSBAS(多軌道・多視点解析)による立体的な変動把握や、インフラ監視・建物傾斜などに対してP-SBASなどの高精度型の需要が強いようです。このあたりは勉強していなかったので、いずれフォローしましょう。

欧州ではデータも自動解析結果もweb上で無償公開されていますが、国内ではまだまだ。これは日本も頑張ってほしい。
一方で、自動解析ではローカル用にチューニングされていないそうですので、プロの技が必要になるとも。素人ユーザーとしては、様々な種類の自動解析結果を得られた場合でも、その精度や誤差に関して留意すべきなのでしょう。


2024年12月23日月曜日

地すべりブロック把握のための DAS 適用

地すべり調査に DAS を利用する方法です。

Previously hidden landslide processes revealed using distributed acoustic sensing with nanostrain-rate sensitivity | Nature Communications

文献では平面計測のみですが、ひずみ計のかわりに途中でボーリング孔を経由する(埋め込む)ことも可能です。地すべり調査と DAS をご存じの方なら誰もが思いつくレベルの調査法なのですが、国内の実務での実施例は見たことがありません(研究で平面のみ、ボーリング孔のみは見たことがあります)。
問題は費用。千万円単位で大きくなるので発注するにも容易ではないのでしょう。精度の高い技術があることは分かっていても高価すぎる、今まで通りでも良い、といったところでしょうか。

DAS、安くなりませんかね。

2024年12月22日日曜日

DASのピッキング

Seismic arrival-time picking on distributed acoustic sensing data using semi-supervised learning | Nature Communications

DASのピッキングに関する文献です。
従来の STA/LTA 等ではうまくいかないDASのピッキングに機械学習を使ったという内容です。

この文献、査読結果が一緒に公開されています。オープンサイエンスもここまで来たのだなと感心しました(他の文献でも公開されていますので、私の気づきが遅かったのでしょう)。

その中の指摘で、近年の文献を見ながら感じていた部分が明示されていました。

I do understand that deep learning is currently a big hype and that it is tempfing, especially for young researchers, to become part of this. However, the days where the mere applicafion of some deep learning model was science, are over. With numerous easily usable programming tools, the training of a neural network (deep or not; this is just somewhat hollow semanfics) has become an easy task for undergraduate students. After all, it is what it is: fifting the coefficients of some funcfional form to a collecfion of data.
This said, it is not clear how exactly the authors go significantly beyond just training yet another deep neural network? What is the innovafion that goes beyond the obvious?

LSM作成でも、機械学習分野でSOTAを達成した手法の流用は見ていて面白いのですが、それまでですよね。できたLSMが実際にどの程度使えるのかがわかりませんので。GISを使って特徴量を作り、機械学習にかけるというのは、学生でもできます。今年のGCONでは高専生も頑張っています。
第3回高専GIRLS SDGs×Technology Contest(高専GCON2024)

ピッキングも同じなのでしょう。他にもいくつか機械学習を利用している文献を見かけます。が、機械学習を使えば精度が上がった、だけの時代はもう終わったと認識せざるを得ません。

2024年12月20日金曜日

土砂災害と地質のスケール

第43回地質調査総合センターシンポジウム「地質を用いた斜面災害リスク評価-高精度化に必須の地質情報整備-」で千木良先生の発表を拝聴しました。

  • 能登地震でのある崩壊の素因として、パミスを含んだ厚さ5㎝程度の層が挙げられる
  • しかし、産総研の地質図に描かれるスケールではない

これまで全国の災害データの地質的素因をシームレス地質図を利用して分析してきましたが、がけ崩れ、土石流には大きく影響しませんでした(地すべりには地質が効きます)。純粋な地質のみでなく、複雑性や断層からの距離等の特徴量も作成しましたが、機械学習モデルが重要とは判断しませんでした。これは、崩壊データではなく、災害データだから(人の活動が影響する)というのが主要因ですが、上記も大きく影響しています。地質は影響する。しかし、あなたの地質図の選択が悪い、という事実を突き付けられているのです。

1つの崩壊、すべり毎に素因を抽出し、それを地道に、年月をかけて積み重ねる。数が集まったら、そこから共通性や特異性を見出すのが研究の基本手順なのですが、近年の研究ではその過程をすっ飛ばし、結果を早急に示しがちに思えます。手元にある災害データ、広域で使える均質な地質図、それらから得られた結果はどれほどの信頼性があるのでしょうか。「ないものは仕方がない」ではなく、ないから作る、積み重ねるのが研究であり研究者でしょう。目に見える成果や時短に迫られる立場もわからないではないのですが。

Landslide Sasceptibility Map を広域で作るのが他国で流行っています。「ひとまずやってみた」レベルが多いのですが、手法は着実に進歩しています。それに投入する特徴量の質が上がれば、信頼性もぐっと上がるでしょう。将来の方のために地味な仕事も積み重ねていきましょう。


2024年12月19日木曜日

直線性

地震波の直線性、平面性、方位角、傾斜角について知ったのが今年に入ってから。
プロから文献を紹介していただき、いくつか事例も見ましたが、なかなか文献に紹介されているような特徴は見出せませんでした。

河川流量の推定に振動を利用されている例を見ますが、以下では直線性、方位角も示されていました。
Exploring the relationship between seismic noise signals and modeled river flow data: A case study from Sicily, Italy - ScienceDirect

These analyses show that the scattered azimuth and the low rectilinearity values, observed at the beginning and the end of Helios, coincide with periods of increased wind speed (Supplementary Figs. 5a and b), which can generate a seismic noise as a consequence of the impact of the wind on the trees or buildings. Indeed, the wind seismic noise is usually characterized by spherical waves showing a low value of rectilinearity (<0.5) and a lack of horizontal trend values (Zheng and Stewart, 1992; Panzera et al., 2016).

振動を理解するには環境計測、音波等も含め多面的に捉える必要があるというのはつくづく感じているのですが、なかなかこのような結論に結び付きません。まだまだわからないことばかりです。