2015年7月30日木曜日

盛土の締固め

地盤工学会誌に締固め試験の記事が掲載されていました。

以前、「スレーキング材は含水比管理より、飽和度管理を行ったほうが良い」と書かれたものを読んだことがあります。その時は、「なぜだろう」と思っていたのですが、少し調べても出てこなかったのでスルーしていました。

今回の記事は一般的な盛土材において、密度と飽和度を使ったほうが良いという内容。が、2ページと短く、よく理解できません。
元になった文献を読んでみようと、他部署の雑誌を探してもらいました。

「基礎工」技術ノート 2013.7~

私の部署で回覧されることはなく、目を通していませんでした。また、個人で持っている方もいらっしゃるようで、歯抜け状態。ま、知りたいところは最初の4回までで納まっていましたのでセーフでした。

要点は以下の通りです。

現代の現場の締固め機械では、容易に室内試験の締固めエネルギーを超過する。
そのため、室内試験でのρd90%以上に現場の乾燥密度が高くなってしまう。
結果、含水比管理をしていると、飽和度が100%に近づく。
結果、泥濘化を招く。
そうならないためにも、飽和度管理が重要。

CBRなどの強度・変形特性はρdと飽和度の関数となる。(含水比・締固めエネルギーはパラメーターとして不要)
最適飽和度は締固めエネルギーに依存せず、土質の影響も少ない。
現場での締固めエネルギーによる wopt 近くの透水係数は、室内試験の wopt の湿潤側で見られる極小値よりも、容易に小さくなる。
従って、含水比管理は本質的でない。土の締固め特性は、乾燥密度と飽和度の関係で表現した方が合理的。


実際の運用はよくわからないのですが、
1.室内締固め試験で最適飽和度を求める
2.その飽和度における各種ρdに対応した強度を求めて図3-15の様な曲線を得る
3.試験施工でρdmaxを求め図3-21の様な整理を行う
4.それにより強度が推定でき、ρd管理値(施工法)を決定可能。
ということでしょうか?

文献には施工例が続いていますので、(歯抜けですが)確認しておきましょう。


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20150731追記

第15回に運用がかかれていました。
ρdの決め方が違いましたね。目的に合致する強度を有するρdを施工目標値とするのが理想のようです。






2015年7月26日日曜日

文献

ためていた文献の整理をしておりました。

多いなあと感じたのが「深層崩壊」「土石流」といった近年の土砂災害関連、そこから派生する「発生場」「天然ダム」「降雨特性」「数値解析」「UAV」でしょうか。特にUAVの利用による災害現場の地形取得、SfM、土量計算はここ1年で圧倒的に増えています。数値解析では粒子法の適用も出てきました。

ちょっと変わったところが、ビッグデータの活用でしょうか。Twitter データから統計的に警戒情報を抽出しようとする試みは面白い試みですね。そういえばNHKスペシャルでも、カーナビの走行データやタクシー会社の走行記録、携帯電話の位置情報等を利用して震災時の人の動き等を解説・問題抽出していました。今後はこれらの動向にも注意を払うべきでしょう。

先日、JSTの文献複写サービスが平成28年2月末で終了する案内が届きました。代替えサービスがいくつかありますし、ネットでも容易に文献を入手できるような時代になりました。個人的にもサービス利用は激減していましたので、終了自体問題ありません。が、入社時から頼っていたサービスだけに少し寂しい気がします。

文献は仕事を行う上で重要なツールです。質・量・入手方法に変化はあるでしょうが、技術者である内はこれからも取り残されないよう、追随していきましょう。


2015年7月25日土曜日

観測井戸と透水係数

久しぶりに、ゆっくり文献を読んでいたのですが、なかなか面白いものがありました。

Nadège Baptiste1, Robert P. Chapuis, What maximum permeability can be measured with a monitoring well?, Engineering Geology, Volume 184, 14 January 2015, Pages 111–118

観測井戸のつくりで透水試験結果が大きく変わりますよ。何も考えずに設置してはダメですよ、透水係数を過小評価してしまい、結果、揚水試験の方が透水試験が高くなるスケール効果の一因となりますよ、といった内容。

驚いたのが、水の中の微細な泡の有無で透水係数が1オーダー変わる点。
あと、ストレーナーの影響を数値計算と理論解で比較している点。以前、私も実施しましたが、浸透流の分野でも案外一般的なのかもしれません。
ストレーナーの影響(その4まで)http://phreeqc.blogspot.jp/2014/09/blog-post_22.html


以下、内容の備忘録です。意訳あります。


1. introductuon
K1:スクリーンの透水係数
K2:フィルター材の透水係数
K3:原地盤の透水係数

2.観測井戸設置の基本ルール
2.1. 粒径加積曲線の作成
原地盤の粒径把握。
細粒分が抜けているとか、2層が混ざっているとか、評価方法あり(Chapuis et al., 2014)。

2.2. フィルター材の選定
原地盤の均等係数、D50などによって、推奨されるフィルター材の径が変わる(Table 2)。

2.3. スクリーンスロットサイズ
MWでは、フィルター材のD10より小さ目のスクリーンスロット。

2.4. MWの設置
セントラライザーやタンパーの使用。
ベントナイトやグラウトがフィルター材へ侵入しないように、2層の干渉区間を設ける。

2.5.記録
設置記録、15cm毎程度。
きちんと記録すれば4時間ぐらいかかるが、多くの施行者は10分~30分と低品質。

3. スクリーンの透水係数
3.1手法
タンク中にMWを設置。低レイノルズ数で、乱流にならない程度の水位差を設け、6段階の流量を設定。(Fig.2)
3.2. Thiemの式
3.3. 数値解法

4. K1、K2、K3の影響
4.1理論解
4.2数値解

5.結果
5.1. K1
K1=1×10-4m/s前後(タンクに入れた。直後の水)
K1=1×10-3m/s前後(2日後の水)
微細なエアーを含んでいると、透水係数は1オーダー落ちる。
現位置では目詰まりにより、さらに落ちる。

5.2. K1.k2の現位置試験への影響
5.2.1. フィルター(充填材)のない場合
現地盤のK3に対し頭打ち(Fig.4)。VP50位のMWだと、ktest=5×10-2〜10-3m/s。目詰まりがあると10〜100倍低くなる(10-4〜10-5m/s)。

5.2.2 フィルター(充填材)のある場合
K1=1×10-4m/s、目詰まりで10-5m/s。
現地盤のK3がスクリーンのK1か、フィルター材のK2 を超えた時点で頭打ち(Fig.5)。

※K3が10-2〜10^0cm/sオーダーで頭打ちになっているので、実際の地盤(10-3〜-5cm/sオーダー主体)では、あまり関係ないでしょう。高透水部のみ気を使えば良いでしょう。

5.2.3 スラグ試験の数値解析例
5.2.4 フィルター材の選定例

6. 考察
透水係数は幾つかの手法、スケールで評価される。
小スケール:土質サンプルの粒径より推定(信頼できる手法の前段階)
中スケール:透水試験
大スケール:揚水試験

MWにおける透水試験でのスクリーン・フィルターの影響を論じたが、同じMWで揚水試験をすると、異なる影響が出るだろう。

大スケールの方が透水係数高い。いろいろな理由が推定されている。
しかし、各々の透水係数の品質については疑問視されていない。

MWの品質の悪さが、いかに透水係数を低く見積もるか(中スケールの透水係数を減ずるか)、そして、それが人工的なスケール効果を生み出すことに寄与するであろうことについて論じた。

2015年7月24日金曜日

地盤工学会賞

ためていた地盤工学会誌を読み返しておりますと、平成26年度の地盤工学会賞が掲載されていました。


目を引いたのが、2つ。小径倍圧サンプラーと以下の論文です。

神谷ほか, 溶存イオンデータの多変量解析に基づいた広域地下水流動系の評価, 地盤工学ジャーナルVol. 9 (2014) No. 2 p. 219-231
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgs/9/2/9_219/_article/-char/ja/

執筆者が発注者主体になっていますが、最初の発表は学生さんではなかったでしょうか?勘違いですかね?
http://phreeqc.blogspot.jp/search/label/R

発表当時の「画期的」という評価には、まだピンと来ていないのですが、論文賞を取るくらいですので重要なのでしょう。ちなみに、まだ実務で使っていません。


倍圧サンプラーは、今頃なぜ?といった印象を受けましたが、これもほとんど使用していません。ほとんどのオペさんが使ったことがないサンプラーですので、準備なし、ノウハウ未伝達でいきなり適用というわけに行かないのと、サンプリングで失敗したくない(一発で採取したい、掘り直しは避けたい)=使い慣れた道具で取ってもらいたい、という思いがあるからです。

ただ、両者ともに学会賞を取るくらいですので、画期的なのでしょう。今後の動向には注意しておきましょう。


2015年7月22日水曜日

水位測定

久しぶりに USGS のサイトでソフトの更新をチェックしていました。

特に目新しいものはなかったのですが、Featured Science に動画がUPされていました。気になって視てみることに。

USGS Groundwater Videos: Groundwater Technical Procedures Videos
http://water.usgs.gov/ogw/video/gwpd.html

見終わって、「なぜこのような古典的な手法までUPされているのだろう?」と言うのが率直な感想でした。



で、今日、採水に行って水位計をド忘れ。

ふと思い出したのが、GWPD 1 -- Measuring water levels by use of a graduated steel tape 。

試してみると、案外使えます。地下水が浅かったので 5.5mコンベックス でも問題なく測定できました。コンベックスにチョークを塗るだけの古典的手法ですが、有用。私には伝わっていない技術?知恵?でした。

コンベックスがボロボロになっているので買い換えようかと思っていたところです。次は黒っぽいモノを探しましょう。


2015年7月20日月曜日

H27 技術士試験

昨年に引き続き、技術士試験を受けてきました。

経験4年~7年で受験できる試験に、私のようなモノが受験するのも趣旨から外れているのでは?と思うこともありますが、ま、試験自体は楽しいので。これで3年連続です。

今年も、試験対策はあまりできませんでした。昨年以上に手を動かさなかったので、漢字が出てきません。帰って調べてみると誤字もあり。情けない。

ポカミスもありましたが、文章は仕上がる。うーん。年の功です。もっと勉強しておけば、良い内容になると思うと、後悔ですね。

体力的に、あと数年は受験出来そうです。が、頭は結構フラフラ。
答案を復元したので、今日はもう寝ましょう。

明日から再び現場、3時半起きです。
気分的にリセットかかりました。また頑張りましょう。

2015年7月2日木曜日

維持管理と探査

先月、2週間ほど道路標識の点検を行っていました。

地上より 5m 程度上にある標識の点検でした。
地上より目視しながらふと思い出したのが笹子トンネルの事故。あれも5m上でしたね。地上からだと金具が入っているかどうかも見えにくい距離なので、それが締まっているかどうかは触らないと絶対にわかりません。笹子トンネルでもボルトが数本抜け出していないと、目視ではわからなかったでしょうね。

今月は吹付けのり面の熱赤外線調査を予定しています。
コンクリートの浮きは、打音調査でわかりますが、手が届かない位置はダメ。そこで遠隔探査になります。が、熱赤外線を利用した推定精度は良くないと感じています。表面の状態(日射、影、湧水)に大きく影響されてしまいます。
もっと精度の良い遠隔探査手法は現段階で実用化・普及していません。打音に代わる遠隔探査技術を開発・実証しよう、といった段階かと思います。

東芝
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2015_06/tp_j0801.htm
JR
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/column/20141104/682273/


事後保全になりますが、実際に事故が起こって、問題が分かって、それを克服する、そしてフィードバックする。維持管理時代の幕開けでは、このような積み重ねも重要になるでしょう。

点検も実施してみないと、実感としてわからないものなのです。橋、トンネル、河川など構造物にかかわらず、とりあえずトライしてみましょう。


2015年7月1日水曜日

Infraworks と 道路中心線形XML

InfraWorks で作成した3Dモデルが好評で、色々追加要求されています。

先日、全道路に色を付けて欲しいと要望があったため、色のついていない箇所に計画道路を作っていました。が、LT版では設計道路を作成できないことに気づきました。

設計道路ができないと、後で線形沿いの動画(ドライブシミュ)を作成するのが面倒です。
何とかならないか?と思いつつ、Roadway Design がないと何ともならないので、計画道路を適当に地形の上に張り付けてみることにしました。

張り付けながら、やはりIPを適当に置くのはまずい思い、道路中心線形XML の読み込みをトライ。が、すぐに挫折。読み込む術がなさそうです。

ダメもとでサポートに問い合わせると、以外に簡単に取り込むことができました。
余談ですが、Autodesk社のサポートには良い印象がなかったのですが、この Infraworks のサポート担当さんは良いですね。特にレスポンスが良い。手探りの部分はあるようですが、質問に対する適確な調査と結果が早々に帰ってきます。優秀な方なのでしょう。

で、その取り込む方法は単純に以下の手順を踏むだけでした。

1. 線形 XML を Civil3D で読み込み、dwg 保存
2. Infraworks で Civil3D の dwg を読み込み。

設計速度等の情報を保持した設計道路として読み込まれています。良いですね。

設計道路の情報を利用して線形沿いのドライブシミュも容易にできました。
簡単なのですが、残念ながら出来栄えは数世代前のゲームのようでした。スケールの問題が大きいのでしょう。道路沿いの作り込みが必要です。
もともと、Infraworks は見せ手に技術がなくても手軽に可視化可能な反面、その出来がトイカメラの様なところがあります。やはりドライブシミュの様に、地形に近接した箇所の描画は、本職のCG屋さんに任せるべきなのでしょうね。

ま、簡単に道路設計の情報を取り込める、ということは分かりました。

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20150702追記
Civil3D 2015 + Jツールで中心線形XMLを読み込んだ際、起点の標高を誤って読み込むケースがあるようです。
今回は、起点よりマイナス側で標高をセットしていたXMLで発生しました。これ、可視化しなければわからなかったでしょう。



Infraworks Viewer

Infraworks 360 を入れて30日以上経過しました。

私のアカウントではLT、他の方のアカウントでは Viewer になっています。
今回、新たなモデルを Viewer で閲覧してもらおうと思い、データをコピーしてから、ふと気づきました。

ローカルモデルを「開く」ボタンがありません。

以前サポートに問い合わせたときは、「30日経過後にデータを渡せばOK」と言われていましたが、実際手を動かしてみますと、どうしても開くことができません。
あらためてサポートに問い合わせると、「先の回答は誤りで、実際はクラウド上のモデルしか閲覧できない仕様」とのこと。うーん、Infraworks の仕様が5月に大きく変わったためか、サポート側も手探りのようです。

問題は、お客さまの環境です。お客様側もデータを見ることができなくなっています。
なんとかせねばと思い、体験版の Full Ver. より パブリッシュ して、Viewer で確認してみました。
アカウント追加時のメールが文字化けするバグがあり招待されたことが分かりませんでしたが、Viewer 上で表示された招待を受け、閲覧することは可能でした。結果、完璧です。
同時にシナリオを書き出していたのですが、こちらもWeb経由で確認。IEでも問題なく動作しました。見た目、若干手抜き & 色褪せたモデルになっていましたが、動きは良好。お客様の意向次第では、購入してもよさそうです。

結局、2016 でもオンラインでしか確認できないため、 2015 時代と大きな変化はありません。早くオフラインで見ることができるようになれば良いのですが。