2015年4月1日水曜日

地すべりと有効応力法

地すべりの場合、実務では2次元逆算法が主体です。

この場合、c、φは計算用のフィッティングパラメーターとしての色合いが強くなります。cは層厚から(全応力法的に)決定し、安全率よりφを逆算します。全応力法でも有効応力法でもありません。言わば経験的手法です。


有効応力法の順解析を研究された方もいらっしゃいます。例えば、以下の文献です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscej1984/1997/575/1997_575_1/_pdf

これは、地すべりのせん断が非常に遅いため、粘土も排水強度で評価できるとの考え方です。c'、φ'は乱れの影響を受けにくい、そのため、コアからとった乱した試料で試験が可能。というユニークな研究でした。
当時、この一連の文献を読んだ際には「使える!」と思ったのですが、現在、ほとんど普及していません。経験的手法(主測線での2次元逆計算)の方が安価で実績があると考えられている?分野ですので、ため池や河川ほど土質力学が入ってこなかったのでしょう。
農林さんも土質力学(ピーク強度と残留強度)を踏まえたc・φ設定法を図書にされていましたが、こちらもなかなか普及していません。発刊当時、これも良い手法だと思ったのですが。

近年、トンネルと地すべりの問題では、3次元安定計算の実施が増えています。が、c、φの考え方についてはいまだに進歩がありません。有効応力法、全応力法どころか、基礎となる土質力学の観点からは、ほとんど進歩していない分野です。


0 件のコメント:

コメントを投稿