2025年8月10日日曜日

文献:表面波探査による地下水位推定

 Physics‐Guided Deep Learning Model for Daily Groundwater Table Maps Estimation Using Passive Surface‐Wave Dispersion - Cunha Teixeira - 2025 - Water Resources Research - Wiley Online Library

AI要約

この研究は、限られた空間的・時間的観測データしか得られない地下水位(GWT)のモニタリングにおける課題に対処するため、DNN(MLP)と受動的な表面波解析(passive-MASW)を組み合わせたアプローチを提案している。
研究サイトでは、鉄道によって誘発される表面波を連続的に記録し、そこから毎日分散曲線(DCs)を測定している。 鉄道線路と平行に5本の測線が配置されており、42個のジオフォンが3m間隔で設置されている。

MLPモデルは、入力としての分散曲線と、出力としての対応する地下水位の深さを用いて訓練された。モデルはセンサーアレイ全体にわたるGWT深度を推定し、日々のGWTマップを生成する。モデルの性能は、訓練ピエゾメーター地点でR²が80%、RMSEが0.03mという高い精度を示した。さらに、訓練データに含まれていない別のテストピエゾメーター地点でも、R²が68%、RMSEが0.03mと良好な結果を示し、空間的な外挿能力があることが実証された。この研究は、ディープラーニングが地震データからGWTマップを推定する上で有効な手段であり、空間的に限られたピエゾメーター情報のみで広範囲の地下水動態を効率的に監視できる実用的かつ効率的な解決策を提供する可能性を示している。

表面波分散の物理::
レイリー波の位相速度(VR)は、地中の周波数(または波長)に応じたS波速度(VS)の構造に依存する。短波長は浅い深度のVSを反映し、長波長は深い深度のV_Sを反映する。この関係は非線形である。

物理モデルの考え方:
地下水位(GWT)の変動が地盤の弾性特性、特にS波速度(VS)に影響を与え、その結果として表面波(レイリー波)の位相速度(VR)の分散特性が変化するという、物理的な関係性を取り扱っている。、地下水位が上昇すると速度は低下し、地下水位が下降すると速度は上昇する。この関係はすべての波長で見られるが、特定の波長でより顕著になる。これは、地下水位の変化(水で飽和しているか否か)によって地盤の剛性が変化し、それがS波速度に影響を与え、最終的に表面波の位相速度に影響するという物理的なメカニズムに基づいている。
Physics-Guided」という言葉は、この地下水ダイナミクスと地震波速度構造の間の物理的な因果関係をモデルの基本的な入力と出力の関連性として捉え、データ駆動型のアプローチの基盤としていることを示している。つまり、地下水位の物理的な変動がどのように地震波の伝播特性に影響を与えるかという知識が、モデルの設計と解釈の指針となっている。

単純に、上載荷重の変化がVsに効いているのでしょう。
あと、Physics-informed と -guided は別物なのですね。もう間違えません。


文献:点群からロックボルトの抽出

 A physics-guided hierarchical deep learning framework for underground rock reinforcement compliance check based on 4D point cloud data - ScienceDirect

AI要約

この論文では、地下鉱山での岩盤補強(ロックボルト)の設置パターンの適合性チェックを自動化・高精度化するために、階層型深層学習フレームワーク(PGHDFramework)の利用を提案している。従来は人手に頼ったため誤差や労力が大きかったが、SLAM-LiDARを使った4次元点群(空間座標+反射強度)データを活用し、手法の汎用性と精度を向上させた。提案手法は、まず物理ベース(LiDAR強度情報)のフィルタリングとクラスタリングでボルト候補を抽出し、その後、PointNet++をベースとした階層型ニューラルネットワーク(4DBDNet)で空間・物理属性を統合した点群セグメンテーションを行う。評価実験では他の先行手法と比べて高い精度・再現率・IoUを達成し、新設坑道でもボルト間隔自動算出による適合チェックを実現できることを示した。今後は粉塵・腐食・視点遮蔽など現場の制約への対応が題として挙げられる。

物理モデルと損失関数について:
本手法の物理的特徴づけの中心は、「強度(LiDAR Intensity)」である。LiDARの強度値は、ターゲット(ボルトと岩盤、金属メッシュ等)の表面反射率ρ、およびレーザーの入射角などの物理パラメータで決定される。論文ではWeitkampのLiDAR方程式を元に、ボルトと非ボルト領域の強度値差が主に表面反射率(材質の違い:金属vs岩盤)に由来する点を物理的に説明している。これに基づき、強度値によるしきい値処理(Intensity Thresholding)が分類に利用されている。
また、Deep Learning部分(PointNet++を用いた4DBDNet)では、強度値(i)を空間座標(x, y, z)とともに標準化し、点群特徴量として多階層で統合的に扱い、ロックボルト識別精度を向上させている。損失関数そのものには直接物理方程式を組み込んでいないが、物理的に導かれた強度しきい値と、それに基づく点群フィルタ/クラスタリング結果を教師データのラベリングに利用し、点群の空間的実測データに物理属性を付与した学習データを生成し、データ駆動型学習を物理的根拠で補強している。

点群の利用方法について詳細:
SLAM-LiDARで取得した点群は(x, y, z, intensity)の4次元データとして保存される。強度しきい値(Intensity Thresholding)で非ボルト点を物理モデルベースでフィルタリング。強度値の違いは主に材質違いなので、しきい値を可視的に調整した。
DBSCANクラスタリングで、密度ベースでボルト点群を抽出。さらにOctreeベースの接続成分解析(CCA)で個別ボルトクラスタを分離。ボルト形状の物理寸法に基づくしきい値処理(dimensional thresholding、buffering)でボルトサイズ・形状に合致するものを抽出。得られたボルトクラスタにラベル付与し、各点について(x, y, z, i, label)の形で教師データ化。値はZ-score標準化し、空間的バラツキと強度の違いを均等に扱えるようにした。
最終的にPointNet++をベースとした4DBDNet(4D Bolt Detection Neural Network)に入力し、多階層・多スケールで空間+物理情報を融合し、点ごとのボルト/非ボルト分類を学習・推論させた。
精度評価は、ボルトレベル(クラスタ単位)、点群レベル(点単位)で実施。精度・再現率・F1スコア・IoUなど多面的指標で先行研究と比較した。

まとめると、本論文の物理モデルは点群の「強度」と「空間座標」を融合し、その違い・相関をラベリング等に活用することで、従来法では解像不十分だった非突出型(Split Set)ボルトの検出と識別精度を大幅に高めている点が最大の特徴である。

損失関数に物理モデルを組み込んでいるのかと期待しましたが、そうではない様子。国内のトンネルではロックボルトは整然と打たれていますので、このようなモデルは必要ないでしょうね。
 

文献:GNN + CAE

 [2107.11529] Graph neural networks for laminar flow prediction around random 2D shapes

書名だけ見て購入し、失敗した図書で引用されていた文献。図書については後日。

AI要約

2次元ランダム形状周りの層流予測問題において、GCNN用いたサロゲートモデルを提案。従来のピクセルベースCNNとは異なり、CFD(数値流体力学)で一般的な三角形メッシュ上で直接グラフ畳み込みを実行可能とすることで、物理シミュレーションと深い親和性を実現した。ランダムな2次元形状まわりの流れ(2,000例)をCFDで計算・データセット化し、これを学習に利用。未知形状に対する速度と圧力場の再構築精度は従来のU-netと比べてパラメータ効率面で優れており、特に境界層付近で高精度であった。GCNNで再計算した流速・圧力場によりドラッグフォース(抗力)も高精度で積分計算でき、GCNNの有用性を示した。

GCNNと解析のリンク方法:
CFD計算で使われる三角形メッシュのノード(頂点)とエッジ(辺)を、グラフのノード・エッジと対応させている。
GCNNはノード間の隣接関係を用いて局所的な特徴抽出を行っている。つまり、CFDでの有限要素法や有限体積法と親和性が非常に高い計算構造である。
メッシュをそのままGNNの入力データとして使うので、CFDで生成された流れデータ(速度・圧力場)をそのままGCNNに投入可能。これにより物理的形状や境界条件、流れの詳細構造を損なうことなく、ニューラルネットモデルによる高速な予測・再構築が可能となっている。

インプット:
・ノード座標(x, y)
・障害物境界情報(どのノードが障害物境界かを表すマスク)
・(場合によって)周囲のメッシュ情報や初期値など

入力は特徴量行列としてGCNN内に与えられる(ノードでは座標やマスク、エッジではノード間の距離など)。

アウトプット:
流速ベクトル u, v(x, y方向速度)、圧力 p

入力された障害物の形と位置などの情報から、GCNNはメッシュノード上の速度・圧力場の空間分布を出力し、その結果がCFDの計算値と合致するよう学習する。予測は未知形状に対しても一般化が可能である。

解析フロー:
ランダムな2D形状をBézier曲線で生成
それぞれの形状に対してCFDで速度・圧力場を計算(三角形メッシュ上に投影)
入力として「三角形メッシュ+座標」を用意
グラフ畳み込みブロックでメッシュ上の情報を伝播・集約・平滑化
各ノードでのu, v, pを出力(流れ場として再構築)
CFD値とのMAEで学習
学習済みモデルで未知形状の流れも高速予測可能

GNNには以前から興味があるのですが、まだ触ったことがありません。感覚的にはどのようなことをしているのか理解できるのですが、具体的に動かすとなると勉強が必要です。
学習用の解析を2000程度実施しても元が取れるというのは、それなりのモノづくり分野ならではでしょう。3次元浸透流では使いづらい、というのは以前にどこかで書き残したと思います。


文献:花崗岩の亀裂、鉱物、引張強度

鉱物分布を考慮したき裂発生・進展解析による圧裂引張試験時の花崗岩の破壊挙動評価 

AI要約

本研究は、花崗岩を対象に鉱物分布を考慮したき裂発生・進展解析(数値解析)により、圧裂引張試験時の破壊挙動を評価したものである。鉱物の分布や含有量が破壊の進展や亀裂生成にどのような影響を及ぼすかを、実験および有限要素法(FEM)によるシミュレーションを組み合わせて解析している。実験データと解析結果を比較し、鉱物分布の違いが破壊挙動に与える影響について議論している。

鉱物含有量・分布:
花崗岩は複数種の鉱物(主に石英、長石、黒雲母など)から構成される。解析に用いた試料は、鉱物分布をデータ化し、各鉱物相ごとに力学特性の違い(ヤング率、破壊強度など)を設定したメッシュモデルを作成している。
REVs(代表的体積要素)ごとに鉱物の割合・配置を反映した力学パラメータを設定し、現実の鉱物分布パターンをモデル化している。

鉱物分布と亀裂の発生・進展との関係:
亀裂(き裂)は、力学的弱部や鉱物境界、脆弱な鉱物が局所的に多く分布する領域から発生しやすい。解析モデルでも鉱物分布に応じて力学的性質が変化するため、亀裂は鉱物境界や低強度鉱物(黒雲母など)近傍から優先的に発生・進展する傾向が出ている。
応力場分布(FEM解析結果)からも、鉱物分布の不均一性が亀裂進展経路に大きく影響し、均質なモデルと比べて破壊開始点や亀裂経路が異なる現象が観測された。
圧裂引張試験の結果、亀裂が主に鉱物の境界や低強度鉱物を通過しやすかった一方で、石英や長石など高強度鉱物で一時的に亀裂の進展方向が変化する様子も見られた。
亀裂発生・進展の予測精度は鉱物の分布データの正確性や力学特性のパラメータ化に依存している。破壊強度や変形特性のばらつきも鉱物分布の違いに起因。

これもピース、かつ引っ張り(圧裂)状態です。亀裂は解析から追いかけているようです。どのように実問題へ発展させていくか、は先の文献と同じで難しいところです。

花崗岩の亀裂、鉱物、圧縮強度

3D analysis of mineralogical and fracture features in granite and impact of biotite distribution on uniaxial compressive strength - ScienceDirect

AIによるまとめです。
最近、特に気になる文献や図書以外はAI任せになりつつあります。ますます英語から離れていきます。

強度と亀裂の基本的な関係:
 花崗岩の鉱物学的異方性(不均一性)と亀裂特性を理解することは、花崗岩の強度と亀裂の進化を評価する上で不可欠。ここでの鉱物学的異方性とは、鉱物の含有量、粒径、粒形、空間分布、粒界特性のばらつきを指し、これが岩石の機械的挙動(機械的強度や亀裂挙動を含む)に影響を及ぼす 。岩石の亀裂発展は以下の8段階。

  1. 亀裂閉鎖
  2. 線形弾性変形
  3. マイクロクラック発生
  4. マイクロクラック成長(安定した亀裂伝播)
  5. マイクロクラックの合体によるマクロクラック発生
  6. マクロクラック成長(不安定な亀裂伝播)
  7. マクロクラック合体
  8. マクロな破壊とポストピーク軟化
荷重の初期段階では粒間亀裂が開始し、より高い応力レベルで粒内亀裂が出現することが確認さた。また、初期荷重段階では、亀裂は黒雲母が豊富な領域に向かって伝播する傾向があることが示された。
亀裂体積比の急激な増加は、試料が不安定な破壊段階に入り、破壊に近づいていることを示唆する 。

鉱物含有量と強度:
先行研究では、鉱物含有量とUCSの間に関係があることが議論されており、特に黒雲母含有量の高さは一般的にUCSの低さと相関があるという負の傾向(逆相関)が報告されている。しかし、本研究の試料では、最も高い黒雲母含有量を持つにもかかわらず、最も高いUCSを示しているものがあり、一般的な傾向に当てはまらないケースとして挙げられる。これは、鉱物の単なる含有量だけでなく、その「分布」が重要であることを示唆している 。

鉱物分布と強度:
鉱物の空間分布は、岩石試料のピーク強度と亀裂発生応力の両方に影響を与える 。本研究では、特に「黒雲母」の分布がUCSに与える影響を分析。「中央領域に黒雲母のような弱い鉱物がより高濃度で存在する花崗岩は、単軸圧縮下で比較的高い強度を示す可能性がある」という仮説が立てられる。

人手を割いていた亀裂や鉱物のセグメンテーションに機械学習を使って省力化するなど、近年の基礎技術を利用した上での報告になっています。(先日聞いたある学会の災害報告会では、国の研究者が未だに古典的な手法の利用を堂々と話されていました。日本も追いついて欲しいものです。)
とはいえ、実務で欲しいのはピースではなくマスとしてのな強度なので、黒雲母のばらつきが対象スケールで不均質と言えない限りは応用の難しい内容です。まだ基礎研究レベルなので、本質的な部分は日本も追いつけるかな?


2025年8月7日木曜日

区間予測

ある時系列データに対し予測区間を求め、異常値が含まれているかどうか判断したいというシチュエーションは多くあります。

例えば、地下水に対する施工の影響。施工前の水位観測データで実行雨量などから簡単なモデルを作成しておき、施工中の水位低下について施工の影響が含まれているかどうか(予測区間を外れているかどうか)を判断したい。このような場合に多用されてきました。

実行雨量から機械学習になっても、考え方は同じです。
区間を作る方法は以下のように複数あります。他にもありますが、分布を仮定せず、早いのは 時系列拡張型の conformal prediction でしょうか。

① ブートストラップ
  • 元データから復元抽出で複数セット作成 → モデル再学習(複数回)で予測分布や区間を構築。
  • 理論背景がシンプルでモデル非依存(どのようなMLでも適用可能)。
  • 分布の仮定をしない分、推定精度はデータ量に強く依存する。
  • 繰返し計算で高コスト/遅い。
② 分位点回帰
  • 目的変数の特定の分位点(例:中央値、95パーセンタイル)を出力する回帰。
  • 分布の仮定不要で非線形構造にも強い。
  • 多数実装GBDT系では実装あり。
  • 分位点ごとに個別学習が必要でコスト増(例:2.5%, 97.5%予測には2モデル)
③  conformal prediction
  • MLモデルでの予測後に別途実施するため、モデル問わず「後付け」可能。
  • 絶対誤差 もしくは正規化絶対誤差を順に並べ、閾値を決めることで区間を予測(回帰) 
  • 誤分類率や区間内率など「理論保証」される。
  • 時系列の取り扱いやデータ分割に工夫が必要。

よくよく考えると、区間を連続して外れると異常となるわけですから、教師ありの異常検知とも言えます。
先日、水位データの異常値を除く方法を問うているプロポがありましたが、こういった方法も使えると思います。

2025年7月26日土曜日

雨量観測所の選定

先日、プロポーザルの特定テーマとして、「がけ崩れ箇所に近接する雨量観測所の選定方法」が問われていました。

降雨確率規模を算出するためにアメダスのような古いデータを使いたい、しかしどこを選んだらよいのかわからない、ということだと思われます。

アメダスでは昭和49年11月1日より観測が始まっています。しかし、観測所が約17㎞間隔で整備されているため、過去の土砂災害に対する降雨トリガー条件を設定する際等に、任意位置での雨量を推定するには、近隣の観測所を何らかの方法で選定し代用せざるを得ません。
このような観測所の選定問題に対し、古典的にはティーセン法を用いたり、周辺観測値の平均を使ったりしている例が多いような気がします。また、「地理的に近接」するとともに、同流域・同斜面等「気象条件が類似」する等の条件を設けて雨量観測所を選定することでも問題を解消できると期待されてきました。QGIS用の自動抽出ツールも提供されていますので、かつては広く受け入れられた方法だったのでしょう。

一方、近年では解析雨量の1㎞メッシュ化により、発生個所での降水量を得やすくなっています。対象箇所を含むメッシュの解析雨量とその周辺観測所を含むメッシュの解析雨量を直接比較し、降雨パターンの似ているメッシュ(観測所)を選定することが可能となっています。つまり、降雨データをベクトルとして扱い、それらの類似度を評価できるので、選択に迷うことがありません。機械学習やデータサイエンスで頻繁に使用される「データ駆動型」のアプローチに基づいた決定方法です。

このように、現在ではデータを根拠として観測局を直接選択することが可能となっています。あえてデータを利用せず、条件や仮定を設けて推定したり、それらの検証を省く必要はありません。が、これをテーマにされているということは、サイエンスとしてではなく、実績のある経験的手法の中から選択したい、ということだったのでしょう。
社会がデータ駆動のさらに次の段階に向かうには、まだまだ時間がかかりそうです。