2016年2月27日土曜日

琉球石灰岩と地下水

最近、「ブラタモリ」を見るようになりました。
http://www.nhk.or.jp/buratamori/index.html

タモリさんが全国を散歩しながら、その土地の文化や歴史などに触れる番組です。最近は、地形・地質・地下水の話が毎回入っており、歴史上の人物や町のつくり方などとの関係を紹介されています。

今日は沖縄・首里でした。
首里城へは行ったことがないのですが、あのような高い位置にあったのですね。地質は透水性の低い島尻泥岩の上に透水性の高い琉球石灰岩が載っている構造だそうです。その境界から地下水が湧水している状況を分かりやすく説明されていました。

島尻泥岩・琉球石灰岩と聞いて思い出したのが宮古島。地下水の受け皿(地下水盆の底)になっています。地下ダムの建設でも有名です。
http://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/tisitu/t_tikasui2/index.html
以前、水収支の関係で浸透流をかけたことがあるのですが、すっかり忘れていました。本島にも分布し、しかもあのような高い位置に分布しているのですね。


首里城から町に降りて井戸の中を覗いた映像にも驚きました。
井戸の中を地下水が流れています!
ま、石灰岩ですし、宮古島の崖からも流れ出てますので当たり前なのでしょうけど、絵的にプチ衝撃でした。浸透流かけたときには(スケールが異なったこともありますが)、ココまでイメージできていませんでしたね。ちょっと反省。
でも、昔の人はどうやって水脈を追って井戸を作っていったのでしょうか?現代のような探査機器はないですし、棒を叩き込んで耳をあてて音でも聞いたのでしょうか?やみくもに掘ったのでしょうか?死活問題ですから鍛えられたのでしょうねえ。水脈探しの効率的な技が残っているのなら、拝聴したいものです。

地形・地質・地下水、昔の方はうまく利用されています。残念ながらその知恵のいくつかは失われているのでしょう。
このような内容を紹介される番組はレアですし、仕事とは異なった目線で純粋に楽しめます。続いている間は見たいと思います。

2016年2月23日火曜日

LS-RAPID 2.1 の収束性

LS-RAPID Ver. 2.1 で、斜面横方向に向かう土砂の飛び出しが発生しました。

どうして急に勢いがついて飛び出すのか?は、以前から疑問でした。LS-RAPID で計算を行うと、頻繁に「粒子法?」と見紛う結果が出てきます。

今回のケースでは、メッシュ間隔(5m)を dt(0.01s)×v(500m/s) が超えたときに発生していました。これを起こさないように、v に応じて dt を自動設定してくれる機能があるのですが、こちらもうまく機能しないようです。いえ、機能しているのかもしれませんが、そもそも、500m/sなどと、自由落下を超えた異常な速度が発生してしまえば、dt をいくら細かく刻もうと速度はすぐに低下しないのでしょう。なぜ、このような異常値が出てしまうのでしょうか?

まず疑うのは反復計算の収束判定値が甘い点。
これについては以前、五大さんのサポートに問い合わせたことがあります。が、残念ながら、五大さんはソルバーの中身にはノータッチだそうです。京大の先生の制作になっていますから、著作権含め分担・契約がきっちりあるのでしょう。

再度、サポートさんに詳しい話を伺ったところ、LS-RAPID では「反復回数だけ決めて、収束判定をしていない」とのこと。驚愕です。ま、サポートさんも詳しいことは御存知ないのかもしれませんので、真偽のほどは分かりません。ですが、どのような異常値が出ても発散せずに(途中で計算が止まらずに)、計算が最後まで続くことや、体積がどんどん増えていくこと(支配方程式が解けていないこと)などを考えると、辻褄は合います。収束判定値が甘いといったレベルでなく、「反復回数だけ決めて、収束判定をしていない」といった理解の方が正しそうです。

そうなると、不自然でない計算結果が得られても、途中の計算で収束しているかどうか、現状では判断できません。サポートさん曰く「それなりの形になれば収束していると判断している」とのこと。つまり、異常な速度が出たり、土砂が飛び出すような結果になれば、途中で発散、収束していないと判断するそうです。うーん。
一つの手としては、計算中に体積変化をチェックし、増え出したら OUT と判定する方法があるでしょう。ただ、増えなかったことはありませんし、判定できても対策はありません。つまり、現状、お手上げです。

緩い地すべりでは体積も増えないそうです。LS-RAPIDは、このような緩い、ゆっくりした動きでないと、本来適用できないのかもしれません。急斜面での崩壊や土石流などの問題に適用するにつれ不具合が生じ、それを押さえ込むパラメーターを追加していった、という経緯のようです。支配方程式やアルゴの点では、崩壊に対しても比較的安定して答えの出せる LSFLOW の方が、現段階では優秀ということでしょう。
LS-RAPIDは、次の Ver. に期待することにして、当分寝かせておきましょう。


2016年2月18日木曜日

崩壊の順序

土砂移動シミュレーションにおいて、その予測は難しいと思います。

過去の再現と今後の予測では同一地形を用いないため、厳密には同一のパラメーターを用いることができません(問題にならない精度の現場が多いように感じていますが)。実務では目的に応じ安全側を配慮して同定値を評価・予測に利用するわけですが、本来なら地形勾配や曲率でパラメーターの相関を探るといった一手間を加える必要があるのでしょう。古い技術ですが、これらに関し十分に議論されてきたとは言えません。まだまだこれからの分野だと思います。

予測は難しいのですが、過去の崩壊の分析には非常に有効なツールだと感じています。
何度か再現解析を行っていくうちに、「ココが先に崩れないと、この堆積形状にならない」「ココの小さなすべりを無視すると、土砂の流下方向が全く異なってしまう」などといった事例に遭遇しています(以前に書き残しているかもしれません)。 つまり、現況再現をする過程で、崩壊の位置・順序などが決まる場合があるのです。
また、崩壊面の位置・形状などといった根本的な3次元地質モデルが、結果を大きく支配することを示しています。地質屋さんの力量が非常に重要になってくるのです。

シミュを行うことで、地質解釈上の2事項のあいまいさが解消します。提示した地質モデルの妥当性と推定したメカニズムの妥当性です。これらを自身で検証できるのです。これは土砂移動のみならず、浸透流や弾塑性シミュなどにも共通します。
言いっぱなしでは技術力の向上は見込めません。観察・推定・検証・修正、これの繰り返しで地質屋になれるのだと思います。

土砂移動シミュ、ありがたく利用しましょう。


2016年2月16日火曜日

LS-RAPID の通常値

LS-RAPID のマニュアルには解析パラメーターの通常値が掲載されています。

参考にされたと書かれている文献を確認してみましたが、大きく外れている値もありました。

Sassa et al.(2010)An integrated model simulating the initiation and motion of earthquake and rain induced rapid landslides and its application to the 2006 Leyte landslide, Landslides, Volume 7, Issue 3 , pp 219-236

すべり面の運動時の摩擦係数の設定値が書かれていませんが、試験結果は39°程度になっています。

他の文献も高めです。
広島の土石流が37.5度。

佐々ほか(2014)高速長距離土砂流動現象の発生メカニズムと地すべり発生運動統合シミュレーション(LS-RAPID)を用いた広島土砂災害の再現, 国際フォーラム「都市化と土砂災害」p85

雲仙眉山は40度です。

Sassa et al.(2014)A new high-stress undrained ring-shear apparatus and its application to the 1792 Unzen –Mayuyama megaslide in Japan, Landslides, Volume 11, Issue 5, pp 827-842

通常値が25~35度とされていますので、公開されている文献は全て高めの値となっています。
土石流の運動時の摩擦係数37.5度は、一見、違和感があります。飽和時の有効応力表示としての試験値かもしれませんが、流下する段階で物性は変化しているでしょう。ま、谷部で計算に使う値は飽和のτss に設定されているでしょうから、実際、φmほど刺激は強くないと思われます。

それにしても、公開されている文献、まだ少ないですね。


2016年2月14日日曜日

維持管理時代の落とし穴

維持管理、メンテナンス、点検、予防保全。聞こえの良いキーワードです。

高度経済成長期に多く作られたと言われる土木構造物ですが、これまで十分な維持管理がなされていたとは言えない状況でした。事故を契機に、これから本格的な点検・メンテナンスを受けることになるでしょう。

喜ばしいことだけではありません。
そこで露呈するのが、手抜き工事。

施工業者が分からない古い構造物はさておき、近年の施工業者が分かるもの、検査し合格を出した方が分かるものは、お困りになるでしょうね。いえ、困りませんか。ヒトの世です。
ま、補修+対策を行う、という結果は変わらないと思います。

これから始まる維持管理時代。上記以外にも、新たな問題は出てくるでしょう。


深層学習の適用

記憶や経験を何かに蓄積させておくというのは、必要だと感じています。

既に老化が始まった身ですので、これからは記憶がどんどん失われていくと思います。ある特定分野に対し deep learning が利用できるというのは、後身だけでなく、己にとっても役に立つかもしれません。

といっても、1から実装する能力・気力もなければ、うまく利用できる保証もありません。
といっても、手を動かさなければ何も始まりません。

ということで、今日はネットに転がっているコンパイル済みのバイナリと画像データセットを拾ってきて、テストしてみました。

まずはトレーニング。手元にGPU搭載機がないため、CPUのみで実施。数が少ないので3時間程度で終わりました。

で、学習させた区分の中にある「ゾウ」のデータを新たに拾って、判別させてみました。結果は以下の通り。

画像1・・・ゾウ90%
画像2・・・ゾウ40%
画像3・・・サイ40%

サイって。ま、画像を見ると何となくわかります。保育園入園前位の知能ですか。
ゾウの学習データは 数十枚程度であったため、様々なバリエーションに対応するにはもっと数が必要なのでしょう。

次は、iPhone。
ガラケーの画像は覚えさせましたが、どのように反応するか?

画像1・・・携帯電話 40%

それなりの答えですね。何をどう判別しているのでしょうか?

次は猫。これは学ばせていませんし、体全体が入っていません。どのように反応するでしょうか?

画像1・・・ザリガニ20%

なるほど。両耳がピンとなっているところを ザリガニのハサミと判定したわけですね。
案外、面白い。


当然ですが、正答率を上げるには、判定させたいカテゴリーの画像を事前に数百枚程度用意しておく必要があるようです。効率的に利用するとすれば、以下の通りでしょうか?

・判定の必要なカテゴリー数の少ない分野で利用
・同じようなスケール、画角で判定できる方が効率的


そう考えると、ぴったりの分野がありますね。
トンネルの支保判定です。
通常、判定に必要な項目の選定と重みづけを、実績支保でチューニングした結果を利用しています。 このチューニング作業、まさに deep learning が得意とするところでしょう。支保パターンも数種類ですし、画像は切羽正面、天端、側壁の3種程度でしょうから。

面倒ですが、そのうち試してみますか。

2016年2月11日木曜日

深層学習

先月末、Google の開発(買収)した AI が 囲碁のヨーロッパチャンピオンに5局全勝したニュースが流れました。

先輩がとても興味を持たれていたようで、「これ、○○に応用できないか?と考えている」などと話されていました。それ、できるかもしれませんが、豪華すぎです。

話題の深層学習(Deep Learning)ですが、個人的には興味のないところです。あえて言うなら、GPU を使用する、といったところに興味をそそられる程度です。

といいつつ、 今日は近くの本屋さんで「深層学習」を探してきました。
1冊は機械の棚に、 もう1冊は地質の棚にありました。何か地質に関係する内容が記載されているのかな?と中を見ましたが、特になし。後で考えると、「深層崩壊」と似たフレーズなので誤って並べられたのでしょう。
結局、興味をそそられず、購入しませんでした。

深層学習を身近なところで導入するとすれば、岩石鑑定でしょうか?
サーバーにアップされた画像を判別し答えを返す、といったようなシステムは現段階でも構築できるでしょう(正答率は別として)。そのような作業は情報地質学会にでも任せればよいでしょうし、個人的には面白みのない話に映ります。正しく判別できたとしても、そこに根拠はありません。やはり、鉱物の種類、形状、組み合わせを見て岩石名を決めるところに面白みがあると思います。

一方、工学屋さんにとっては正答率が高ければ問題ないわけですから、一定のニーズが生まれると思います。岩盤を掘って、ハンマーでたたいた音と写真をサーバーに送るだけで、岩石名や土軟硬区分とその確率を返してくれると、使いたくなる方もいらっしゃるのではないでしょうか。もともと経験工学ですから、学習が進むほど正答率を上げて標準化されることは想像に難くないところです。

機械の強みは単純作業を長時間、繰り返し実施できることです。世代間で技術の伝承が途切れるというようなことはありません。酒を飲んで憂さを晴らす必要もありません。常時、トップスピード付近で何十年もブラッシュアップを続けることが可能です。経験工学分野では勝ち目のないような気がします。

囲碁で AI が人に勝利するのはあと10年かかると言われていたそうです。それが実現しました。さあ、3月の韓国での対戦はどうなるでしょうか。