先日、プロポーザルの特定テーマとして、「がけ崩れ箇所に近接する雨量観測所の選定方法」が問われていました。
降雨確率規模を算出するためにアメダスのような古いデータを使いたい、しかしどこを選んだらよいのかわからない、ということだと思われます。
アメダスでは昭和49年11月1日より観測が始まっています。しかし、観測所が約17㎞間隔で整備されているため、過去の土砂災害に対する降雨トリガー条件を設定する際等に、任意位置での雨量を推定するには、近隣の観測所を何らかの方法で選定し代用せざるを得ません。
このような観測所の選定問題に対し、古典的にはティーセン法を用いたり、周辺観測値の平均を使ったりしている例が多いような気がします。また、「地理的に近接」するとともに、同流域・同斜面等「気象条件が類似」する等の条件を設けて雨量観測所を選定することでも問題を解消できると期待されてきました。QGIS用の自動抽出ツールも提供されていますので、かつては広く受け入れられた方法だったのでしょう。
一方、近年では解析雨量の1㎞メッシュ化により、発生個所での降水量を得やすくなっています。対象箇所を含むメッシュの解析雨量とその周辺観測所を含むメッシュの解析雨量を直接比較し、降雨パターンの似ているメッシュ(観測所)を選定することが可能となっています。つまり、降雨データをベクトルとして扱い、それらの類似度を評価できるので、選択に迷うことがありません。機械学習やデータサイエンスで頻繁に使用される「データ駆動型」のアプローチに基づいた決定方法です。
このように、現在ではデータを根拠として観測局を直接選択することが可能となっています。あえてデータを利用せず、条件や仮定を設けて推定したり、それらの検証を省く必要はありません。が、これをテーマにされているということは、サイエンスとしてではなく、実績のある経験的手法の中から選択したい、ということだったのでしょう。
社会がデータ駆動のさらに次の段階に向かうには、まだまだ時間がかかりそうです。