昨日、産総研さんの第41回地質調査総合センターシンポジウムを拝聴しました。
地質に関するCIM やデジタル化の話、九州のハザードマップ作成についての報告がありました。
ハザードマップは産総研の方の報告でした。その中には LSM の話もありました。産総研では LSM を「地すべり感受性マップ」と訳されているようです(が、この訳は一般的ではないとおっしゃっていました)。スライドには「崩れやすさマップ」という記載もありましたので、今後はわかりやすい後者に落ち着くのかもしれません。
LSM 作成の話がメインのように思えましたが、表題はハザードマップで、しかも使用されているインベントリは被災を伴う災害データベースであり、作成されたマップはリスクマップに近いようでした。「感受性とハザードはどう違うのか」と質問された方がいらっしゃいましたが、「いつ、どこで、まで答えるのがハザード」というような回答でした。また、災害データを使われた理由については、「被災の有無にかかわらない崩壊データも一部で使っている。ないものは使えない」といった回答でした。
それをどうするか、は研究者ではなく技術者の仕事、でしょうか?Googlig では産総研さんからのリスクマップ作製に関する委託業務がいくつか引っかかりますので、初めからLSMでなくリスクマップを作成する目的だったのか、単に予算の問題だったのかもしれません。
九州地域における斜面災害リスク評価主題図改良業務:SVMを利用
九州北部地域の地質情報解析によるリスクマップ(案)の作成業務:災害特性に着目
国内では崩壊データを整備する仕組みがありません(国が災害データを収集する仕組みはあります)。災害データを使うと、民家に近いところが危ない、危険区域や危険個所に指定されている範囲が危ない、という結果になります。これは当然で、あちこち崩壊しても被災した箇所しか国には報告されない、報告外の箇所は未崩壊として誤って扱われてしまいやすいというのが理由です。そのインベントリを教師データに使用すれば、属性としての地質よりも区域等が効いてきます。機械学習モデルの中で地質の重要性が薄れてしまうのです(地すべりはそれでも地質が効くのでかなり重要なのでしょう)。
では、LSMを作成するのに災害データしか入手できない場合はどうするか?
①航空写真、衛星写真等から作成する。
産総研さんの「一部」というのはこれかもしれません。時間と費用がかかるものの、現状では最も精度の高い方法と言えるでしょう。写真等から抽出するための画像処理や機械学習が進化すれば解決すると思います。が、現状では最後に人手が必要です。もう少し待ちましょう。
②文献で利用されているデータを利用する。
昨日の文献通りです。ローカルの評価にデータが不足すれば、世界中から集めてくればよいのです。文献個々のサプリメントデータを集めるのも有効です。機械学習にかける際には多少の工夫が必要になると思いますが、データ不足には効果的です。
③LSMをあきらめてリスクマップを作成する。
この場合、LSMを作成したうえで、ある地域に台風〇〇号並みの豪雨が来たらどうなるか、その際に被災しやすい場所はどこか?といったような手順は踏めません。被災関係なく豪雨や地震で崩れそうな場所を予測することも正確にはできないのですが、被災しやすい箇所は推定できます。
産総研さんの報告からは、①と③のいずれの方法をどの程度採用しているのかは明確ではありませんでした。聞く限りでは作成されたハザードマップ?リスクマップ?よりは収集された属性データを公開していただく方が、後々利用目的に応じて柔軟なマップ作りができるように感じました。