2025年1月13日月曜日

Three-Dimensional Back Analysis

数か月前に読んでいた RegionGrow3D を実際に動かしてみました。
https://phreeqc.blogspot.com/2024/09/landslide-susceptibility-map-generated.html

いくつか修正は必要でしたが、用意したDEMでも素直に動きました。どの程度の予測性能なのか、他の LSM と比較する方法が欲しいですね。

使い勝手は良いと思います。サクション、土層厚、強度の確率分布など、いくらでも細かく設定できそうですし、逆に簡略化も可能です。すべる、すべらないの2値分類でよければ、DEMのみでもよさそうです。

確率分布の設定に利用する土質強度の逆算方法は以下。
Geologic Trends in Shear Strength Properties Inferred Through Three-Dimensional Back Analysis of Landslide Inventories.pdf

3次元での逆算です。これもコードが公開されています。計算の流れは以下の通り。

BackAnalysis_3D.m
  1. 土の単位体積重量・想定する最小 c/Φ等の入力。
  2. DEM (すべり面・地表面) と地すべり範囲を示すSHPの指定。
  3. gradient_king 関数で、滑落面の傾斜角と方位を計算。
  4. 各地すべりのポリゴン領域に対して、マスクを作成。必要な部分だけ DEM 情報を抜き出し、土の重量や間隙水圧を計算。
  5. SimpJanbu3D.m:FS=1の c or Φの逆算:縦方向FS=1に加え、横方向FSを2ステップで計算。その後、崩壊方向(asp)を回転させながらFDx=0境界を探る。
  6. F(idx) に解析結果を格納し、SHP(ba_shp)へ書き出し。
今回は RG3D の文献で使用されていた確率分布を使ったので逆算まで行っていません。逆算する場合は、SLBLですべり面を求めてから動かすのが楽かな。

2024年12月31日火曜日

やり残し事項 2024

昨年度やり残した短期目標「優先度高:機械学習のスキル増強」「優先度中:DAS」は完了です。我乍ら、うまくいきました。

中期目標も順調な滑り出し。非常に優秀な後輩君が走り出し、安全管理や解析スキル等をスポンジのように吸収しました。GPTがすぐに使える環境があったこと、その精度がこの1年でかなり高くなったことも効率良く彼が育った要因の一つでしょう。時代とともに、育成方法も変化するのですね。さらに育ってもらうためには、相応の場の提供が必須です。プレッシャーです。


やり残し事項は優先度低のみ。

優先度低:流体+個体(不連続体+連続体)+振動
優先度低:Dtransu の MPI/GPU 対応
優先度低:地表流+地下水+移流拡散

SLBL

地すべりのすべり面を3次元で表現する場合、ボーリングで決定した深度と平面ブロックの位置を通すようにサーフェスを作成します。

ボーリングがない場合、あるいは地震後など多数のすべりが発生した場合に、尤もらしいすべり面を作成したいということもあるでしょう。精度が悪くとも、GIS等で広域かつ一括処理できれば便利です。

SLBLという手法を最近知ったのですが、これが手軽でしょう。
作成される深度に地質的な根拠はなく、処理も周辺4~8方向の高さを使用するだけで非常に単純なのですが、経験的におかしくない面を作成できそうです。公開されているArcGISのプラグインは不安定でしたが、うまく動いた時の結果だけを見ると、それなりに使えそうな考え方でした。
近年ではInSARと組み合わせてキャリブレーションしようとする方もいらっしゃるようです。国内では、そこまで大きなすべりは扱わないでしょうかね。

GPTでも組めそうな程度の内容です。活用してみましょう。

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20250105 追記

SLBL なら csv のみで処理できるでしょう、と自分で組んでみました。
ポリラインで地すべり範囲を囲まず、 csv 全体を作成対象とすると、接谷面図のような結果になります。山頂の尾根部にも面ができてしまうので、囲まないとダメなのでしょう。
ま、これはこれで使えそうですが。

2024年12月25日水曜日

反応経路モデリング

Fluid-rock reaction path modeling of uranium mobility in granite-related mineralization: A case study from the Variscan South Armorican Domain - ScienceDirect 

PHREEQC を用いてバッチ試験を繰り返すことで概念モデルの妥当性を検証した内容です。水‐熱のシミュレーションはすでに実施済みのようで、残された反応部分の報告です。あえて kinetic model を使用せず、扱いやすいバッチ試験を利用されている点では、実務上の利便性が高いと言えます。

この報告、水質計算に目が行きがちですが、地質屋さんとして難しいと感じるのは岩石側、鉱物構成の設定でしょう。地下深い場所の鉱物構成をいかに尤もらしく設定できるかがポイントです。計算で水質を再現できると、設定の妥当性が高くなると考えることもできます。このトライ&エラーは Geochemist しかできないでしょう。

固液比については、感度分析のように複数実施した結果から、尤もらしい設定を採用するだけですので難しくはないでしょう。ただ、浸透流の結果との整合性を考えるのは難しいでしょうね。バッチ試験ですから余計に。

実務では源泉への影響調査などに適用できそうです。一つのベンチマークになりそうな文献です。


2024年12月24日火曜日

SBAS 自動解析

Automated Python workflow for generating Sentinel-1 PSI and SBAS interferometric stacks using SNAP on Geospatial Computing Platform - ScienceDirect

PS と SBAS の自動解析スクリプトを作成したよ、という内容です。コードは公開されており、私の環境でも少しの修正で動きました。

文献にも書かれていますが、時系列変位の整理までは実施してくれません。データもローカルにダウンロードしてから計算されますので、時間がかかります。必要となるストレージサイズも大きくなるなため、個人的にはLiCSBASなどの他のコードの方が魅力的でした。

SBASベースの手法には、多くの種類があります。近年ではMSBAS(多軌道・多視点解析)による立体的な変動把握や、インフラ監視・建物傾斜などに対してP-SBASなどの高精度型の需要が強いようです。このあたりは勉強していなかったので、いずれフォローしましょう。

欧州ではデータも自動解析結果もweb上で無償公開されていますが、国内ではまだまだ。これは日本も頑張ってほしい。
一方で、自動解析ではローカル用にチューニングされていないそうですので、プロの技が必要になるとも。素人ユーザーとしては、様々な種類の自動解析結果を得られた場合でも、その精度や誤差に関して留意すべきなのでしょう。


2024年12月23日月曜日

地すべりブロック把握のための DAS 適用

地すべり調査に DAS を利用する方法です。

Previously hidden landslide processes revealed using distributed acoustic sensing with nanostrain-rate sensitivity | Nature Communications

文献では平面計測のみですが、ひずみ計のかわりに途中でボーリング孔を経由する(埋め込む)ことも可能です。地すべり調査と DAS をご存じの方なら誰もが思いつくレベルの調査法なのですが、国内の実務での実施例は見たことがありません(研究で平面のみ、ボーリング孔のみは見たことがあります)。
問題は費用。千万円単位で大きくなるので発注するにも容易ではないのでしょう。精度の高い技術があることは分かっていても高価すぎる、今まで通りでも良い、といったところでしょうか。

DAS、安くなりませんかね。

2024年12月22日日曜日

DASのピッキング

Seismic arrival-time picking on distributed acoustic sensing data using semi-supervised learning | Nature Communications

DASのピッキングに関する文献です。
従来の STA/LTA 等ではうまくいかないDASのピッキングに機械学習を使ったという内容です。

この文献、査読結果が一緒に公開されています。オープンサイエンスもここまで来たのだなと感心しました(他の文献でも公開されていますので、私の気づきが遅かったのでしょう)。

その中の指摘で、近年の文献を見ながら感じていた部分が明示されていました。

I do understand that deep learning is currently a big hype and that it is tempfing, especially for young researchers, to become part of this. However, the days where the mere applicafion of some deep learning model was science, are over. With numerous easily usable programming tools, the training of a neural network (deep or not; this is just somewhat hollow semanfics) has become an easy task for undergraduate students. After all, it is what it is: fifting the coefficients of some funcfional form to a collecfion of data.
This said, it is not clear how exactly the authors go significantly beyond just training yet another deep neural network? What is the innovafion that goes beyond the obvious?

LSM作成でも、機械学習分野でSOTAを達成した手法の流用は見ていて面白いのですが、それまでですよね。できたLSMが実際にどの程度使えるのかがわかりませんので。GISを使って特徴量を作り、機械学習にかけるというのは、学生でもできます。今年のGCONでは高専生も頑張っています。
第3回高専GIRLS SDGs×Technology Contest(高専GCON2024)

ピッキングも同じなのでしょう。他にもいくつか機械学習を利用している文献を見かけます。が、機械学習を使えば精度が上がった、だけの時代はもう終わったと認識せざるを得ません。