土質力学の視点からのLSM作成手順です。
文献に書かれている手法を組み合わせることで、複数の Landslide に対する3次元でのすべり面推定から、安定計算(逆算)によるc・φの確率分布推定、順算によるLSMの作成まで実施できました。
LSMの出来は、感覚的に良くはないが悪いとまでは言えない程度。今回は10mDEMを使用したので、数十mのすべり範囲ではスライス数が少なく精度がイマイチなのでしょう。日本全国を扱うとなると、精度と計算時間のトレードオフに悩まされるのでしょうね。
使った文献、手順は大別して3つです。
1.3次元でのすべり面推定: SLBL
文献:Structural analysis of Turtle Mountain (Alberta) using digital elevation model: Toward a progressive failure - ScienceDirect
日本の深層崩壊での適用例:ESurf - Testing a failure surface prediction and deposit reconstruction method for a landslide cluster that occurred during Typhoon Talas (Japan)
入力:DEM(Pre-Landslide)、崩壊・すべり範囲SHP
出力:崩壊・すべり面DEM
・崩壊・すべり前のDEM(TIF)が必要です。
・崩壊・すべり範囲ポリゴンには堆積域を含めません。
・複数のポリゴンを一つのSHPにまとめます。
・DEMとSHPの座標系を一致させます。
・個々のポリゴン毎にDEM作成する場合:Multi Area
・結果を1枚のDEMにまとめる場合:Single Area
・出力結果と崩壊・すべり発生後のDEMと見比べ、パラメータを調整します。
2.3次元安定計算(逆算)によるc・φの確率分布推定
文献:Geologic Trends in Shear Strength Properties Inferred Through Three‐Dimensional Back Analysis of Landslide Inventories - Bunn - 2020 - Journal of Geophysical Research: Earth Surface - Wiley Online Library
実装:GitHub - benalesh/Landslide-Forensicsを修正
https://phreeqc.blogspot.com/2025/01/three-dimensional-back-analysis_18.html
入力:DEM(Pre-Landslide)、崩壊・すべり範囲SHP、崩壊・すべり面DEM
出力:c・Φ確率分布MAT
・座標系は一致させておきます。
・DEM範外の崩壊・すべりポリゴンを消去しておきます。
・飽和度、水平震度、c固定、φ固定など、いくつかの仮定が必要になります。
・Catastrophic と Progressive で読み込む Tif が異なります。
・実装が古いため、MATLABの現行Verで扱うには修正が必要です。
・確率分布出力のコード追加が必要です。
3.3次元安定計算(順算)によるLSMの作成: RegionGrow3D
文献:RegionGrow3D: A deterministic analysis for characterizing discrete three-dimensional landslide source areas on a regional scale
土砂分布深度を地形から推定する場合:How well can hillslope evolution models “explain” topography? Simulating soil transport and production with high-resolution topographic dataHow well can hillslope evolution models “explain” topography? | GSA Bulletin | GeoScienceWorld
実装:ghsc / Landslide Hazards Program / RegionGrow3D · GitLab
入力:DEM(Pre-Landslide)、c・Φ確率分布MAT
出力:LSM(土質力学の視点から、すべり・崩壊確率として表現したマップ)
・飽和度、土砂分布深度、PGAなど、いくつかの仮定が必要になります。
・実装が古いため、MATLABの現行Verで扱うには修正が必要です。
・確率分布出力のコード追加が必要です。
全体を通して、1地域、数千のすべりを処理するのに数時間程度でした。案外速いので、5mDEMでも実用的な時間内で処理できそうです。
精度は落ちるものの大量に処理して確率分布としてc・φを扱う目的外でも、日本の深層崩壊例のように、ある崩壊に着目し精度よく3次元の安定性を計算するという目的にも使えそうです。
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