2025年12月5日金曜日

Landslide + PINN

機械学習を利用した Landslide Susceptibility Map の作成について、日本はかなり出遅れたと書きました。
https://phreeqc.blogspot.com/2024/09/landslide-susceptibility-map-using-ml.html

1年以上経過しましたが、状況は変わらないようです。
その間、海外ではさらに進んで、PINNに近いモデルがいくつか発表されています。すぐに実務に利用できそうなもの、難しそうなものが混在していますが、知識を Update しておきましょう。

A physics-informed data-driven model for landslide susceptibility assessment in the Three Gorges Reservoir area - ScienceDirect

 非発生データを 三次元安定解析で Fs>1.5 のエリアから抽出。
今まで非発生エリアからバッファ+ランダムでサンプリングしていましたが、これだと偶然崩れなかった場所が含まれます。これらを物理モデルではじくことができる点がこの論文の新規性でしょう。

Towards physics-informed neural networks for landslide prediction - ScienceDirect

地形量からc、φを推定し、物理層に与えて安定性を予測するモデルです。損失関数に物理モデルを利用しているのではなく、レイヤーに含められています。
物理層は安定計算ベースですが、すべて TensorFlow のテンソル演算(tf.math.sin, tf.math.pow など)で実装されており、逆伝播可能になっているところが工夫点でしょうか。

Physics‐Informed Deep Learning for Revealing the Evolutionary Characteristics of Landslides Induced by Rainfall Process - Li - 2025 - Geophysical Research Letters - Wiley Online Library

こちらは内部にも損失関数にも物理モデルを導入しています。よく構成されたな、というのが率直な感想です。実務に適用しづらいのですが、一手法として頭に入れておきましょう。

数値シミュレーション(事前学習用)
元データ:飽和度・間隙水圧・有効応力場と斜面安定度(560×320画素画像+安定度値),800シナリオ
雨量条件:2.5〜20 mm/hr
学習データ:雨量 500 サンプル
検証データ:雨量 300 サンプル

模型実験データ(ファインチューニング用)
元データ:模型斜面のマルチフィジックス情報+安定度(55サンプル)
学習データ:雨量 33 サンプル
検証データ:雨量 22 サンプル