2025年7月26日土曜日

雨量観測所の選定

先日、プロポーザルの特定テーマとして、「がけ崩れ箇所に近接する雨量観測所の選定方法」が問われていました。

降雨確率規模を算出するためにアメダスのような古いデータを使いたい、しかしどこを選んだらよいのかわからない、ということだと思われます。

アメダスでは昭和49年11月1日より観測が始まっています。しかし、観測所が約17㎞間隔で整備されているため、過去の土砂災害に対する降雨トリガー条件を設定する際等に、任意位置での雨量を推定するには、近隣の観測所を何らかの方法で選定し代用せざるを得ません。
このような観測所の選定問題に対し、古典的にはティーセン法を用いたり、周辺観測値の平均を使ったりしている例が多いような気がします。また、「地理的に近接」するとともに、同流域・同斜面等「気象条件が類似」する等の条件を設けて雨量観測所を選定することでも問題を解消できると期待されてきました。QGIS用の自動抽出ツールも提供されていますので、かつては広く受け入れられた方法だったのでしょう。

一方、近年では解析雨量の1㎞メッシュ化により、発生個所での降水量を得やすくなっています。対象箇所を含むメッシュの解析雨量とその周辺観測所を含むメッシュの解析雨量を直接比較し、降雨パターンの似ているメッシュ(観測所)を選定することが可能となっています。つまり、降雨データをベクトルとして扱い、それらの類似度を評価できるので、選択に迷うことがありません。機械学習やデータサイエンスで頻繁に使用される「データ駆動型」のアプローチに基づいた決定方法です。

このように、現在ではデータを根拠として観測局を直接選択することが可能となっています。あえてデータを利用せず、条件や仮定を設けて推定したり、それらの検証を省く必要はありません。が、これをテーマにされているということは、サイエンスとしてではなく、実績のある経験的手法の中から選択したい、ということだったのでしょう。
社会がデータ駆動のさらに次の段階に向かうには、まだまだ時間がかかりそうです。


2025年7月9日水曜日

論文 DASによる震源決定法

Source location of volcanic earthquakes and subsurface characterization using fiber-optic cable and distributed acoustic sensing system | Scientific Reports

震源決定

・2手法の併用
・両者を使用して震源位置を決定し、最も可能性の高い結果を採用。
・解析ではS/N比が4より大きい波形データを使用。
・グリッドサーチでは、すべてのグリッドポイントの到着時間差を事前に計算しておくことにより、ほぼリアルタイムで震源決定可能。

1.到着時間差法
道路のカーブを利用し、L字型アレーとして解析。
入射地震波の遅延性(伝搬方向と入射角)を推測。
30.6〜71.4mの組み合わせを利用。コヒーレンスの高い波を利用
到着時間差は、クロススペクトルの位相差より計算。
クロススペクトルは主に振幅の大きい波から計算されるため、到着時間の差はS波の到着と関連していると仮定した。
波形に12秒の時間ウィンドウを適用。
グリッドサーチを利用。

2. 振幅ソース位置(ASL)法
光ケーブルに沿った地震波の最大振幅を測定し、火山性地震の発生源を特定。
ASL法では、発生源から発生する地震波は、幾何学的な広がりと固有の減衰によって減衰すると仮定。
サイト増幅係数は、地域性構造地震のコーダ波の解析から決定。
火山性地震の最大振幅を光ファイバーケーブルに沿ったすべての測定点で読み取る。
Qを10〜100とすると、結果は大きく変化しない。20を使用。
グリッドサーチの利用。

到着時間差の測定
光ファイバーケーブルは長距離をカバーするため、到着時間差を計算する測定ポイントのペアの間隔距離には多くの選択肢がある。
最大間隔距離をS波の波長(4Hz)の約4分の1に設定。
ケーブルに沿って90m以内に位置する一対の測定点の波形を解析。
波形の相関を調べるために、コヒーレンスが0.5より大きい波形を使用。
ケーブル方向が異なる測定ポイントでの動的ひずみ信号は極性が異なる場合があるため、ケーブルの方向が互いに30°未満で一致している測定ポイントのペアのみを使用。
ケーブルに沿って91.8m以内にある測定ポイントのペアについて、9つの到着時間差を計算した。

次の手順を適用して、どの間隔が適切であったかを判断。
(1)10.2mから91.8mまでの9区間を10.2m刻みでデータを用意し、
(2)最適な位置を取得し、各区間の分散減少を評価。
(3) 分散の減少が10%未満の区間のデータを削除。
(4)その後、ステップ(2)からこのプロセスを繰り返した。
(2) から (4) までのプロセスは、差異削減が10%を超えたときに終了。
30〜70mの間隔を決定。

部位増幅率の推定
直達S波に続くコーダ波は、不均質な構造が地震波を十分に散乱させると、空間的に均一に分布する。
サイト増幅係数は、基準局に対するターゲットサイトにおけるコーダ波の相対振幅より推定。
約50〜200 kmの距離と約10〜100kmの深さで発生するマグニチュード3以上の地殻変動地震を11回利用。
ケーブルに沿った測定点における二乗平均平方根の振幅を計算し、基準点(地震計が仮的に設置されたMP1027)の振幅と比較。
S波走時の2倍以上の経過時間を持つコーダ波を使用。
5秒ごとに0〜50秒の経過時間の相対振幅を推定し、各測定ポイントでの平均振幅を分析のサイト増幅係数として使用した。
相対振幅の標準偏差は非常に小さく、サイトファクターが確実に評価されていることを示す。
サイト増幅率は、光ファイバケーブルに沿って対数スケールで約1のオーダーで変化するため、ASLではこの補正が極めて重要である。