AI要約
背景
地質工学的な不確実性を低減するためには、信頼性の高いデータの量を増やすことが不可欠です。しかし、初期段階のプロジェクトでは、高品質な地質工学用ボアホールの数は限られており、大部分を占める探査用ドリルのデータは品質が不安定なRock Quality Designation (RQD)などに限定されています。また、探査用の実物コアは、分析のために分割されたり、経年劣化や廃棄によって利用できなくなることが多く、コア写真のみが唯一の信頼できる情報源となることが多々あります。従来のコア写真の再ロギングは、時間がかかるだけでなく、ロガー(記録者)の主観やバイアスに影響されやすいという課題がありました。これらの課題を解決し、大量の既存コア写真を客観的かつ効率的にデータ化するため、機械学習を用いたワークフローが開発されました。手法
機械学習手法: ディープラーニングの一種であるMask_RCNN(畳み込みニューラルネットワーク)が使用されています。これは、画素を自動的に分類・グループ化して特徴マップを作成し、分類を行うモデルです。前処理:50〜100枚程度のコア画像に対し、各カテゴリーを表すセグメントをポリゴンで囲んでラベル付けを行います。データセットはトレーニングセットと検証セットに分割され、モデルの評価と調整が行われます。
コアの列を特定し、画像を直線化(リニアライズ)して深度を参照するための別のモデルも利用します。説明変数(入力データ): コア箱のカラー写真です。一貫した照明と色バランスで撮影された写真が、トレーニングに適しています。
目的変数(分類指標): 以下の3つのシステムが開発されました。
Core Damage Index (CDI): コア径に対する砕屑物の平均サイズに基づき、岩盤の状態を5つのカテゴリーに分類します。
- クラス1: 砕屑物のサイズがコア径の2倍より大きい(> 2x)。従来のRQD(岩質指標)に相当する良好な状態です。
- クラス2: 砕屑物のサイズがコア径の1〜2倍(1 - 2x)。SCR(固体コア採取率)に相当します。
- クラス3: 砕屑物のサイズがコア径の0.5〜1倍(0.5 - 1x)。
- クラス4: 砕屑物のサイズがコア径の0.25〜0.5倍(0.25 - 0.5x)。
- クラス5: 砕屑物のサイズがコア径の0.25倍未満(< 0.25x)。これには角礫(breccia)、砂、ガウジ(gouge)などが含まれます
Pseudo-RQD(擬似RQD): コア画像上の割れ目と破砕帯(ラブルゾーン)をマッピングして計算されます。自然な不連続面(割れ目)と掘削時などの機械的な破壊を区別しないため、従来のRQDと区別するために「Pseudo」と呼ばれています。
Break Frequency(割れ目頻度): Pseudo-RQDと同様に、割れ目の数から推定されます。ポストプロセッシング: 5cm未満の間隔のフィルタリング、同じクラスの連続する間隔の結合などのクレンジング処理を経て、以下を表形式でエクスポートします。
- ホール名(ボアホールID)
- 開始深度・終了深度(インターバル)
- 割り当てられたクラス(CDIクラスなど)
- 該当するコア写真への参照
Leapfrog Geoなどのソフトウェアにこれらのデータをインポートすることで、以下のような高度なモデリングが可能になります。
- 地質工学ドメインモデルの構築: 抽出されたCDI(コア損傷指数)やPseudo-RQDデータを、地質、構造、岩盤、水理地質の各コンポーネントモデルを構築するためのインプットとして使用します。
- 断層帯の詳細なモデリング: CDIは5cm単位という非常に高い解像度でデータを生成できるため、断層の核(コア)と損傷帯(ダメージゾーン)を明確に区別し、断層の幅を正確に3D空間で評価できます。
- 岩盤の変動性の可視化: 従来の1.5m間隔のRQDでは捉えきれなかった岩盤内の細かな品質変化を、3D空間上で連続的に表現できるようになります。
結果
高解像度なデータの取得: CDIを用いることで、従来の1.5m間隔のRQDロギングと比較して4倍以上の高解像度で地質工学的特徴を捉えることが可能になりました。客観性の確保: ロガーの主観を排除し、砕屑物サイズという客観的な基準で分類することで、一貫したデータセットを構築できました。
損傷の識別: 掘削時の機械的な損傷と、断層核や断層損傷帯のような地質学的な損傷を区別しやすくなり、構造モデリングや水理地質モデリングに貢献するデータが得られました。
考察
客観性の重要性: 機械学習は、主観的な入力が増えるほど、信頼性を維持するために必要な学習データ量が指数関数的に増加します。そのため、RQDのような主観的な判断(自然な割れ目か機械的な破壊かの区別など)を伴う指標は、自動化には不向きであると指摘されています。デジタル化の限界: コア写真からは岩石の強度や、画像に現れない微細な割れ目の表面状態などを特定することはできません。したがって、この自動ロギングは経験豊富な技術者による詳細なロギングを完全に置き換えるものではなく、既存の膨大なデータを補完するためのツールとして位置づけられます。
モデルの汎用性: 特定の堆積物や条件に過剰適合(オーバーフィッティング)することを避けるため、分類システムを一般化し、客観的な基準(コア径に対する砕屑物サイズなど)を採用することが、信頼性の高いMLモデル構築の鍵となります。
まず思ったのは、オペレータさんによってコアの品質が異なるため、実務に適用するには壁があるだろうな、という点でした。毎回腕の良い、費用の高いオペさんに掘ってもらうことはできないのでしょう。時々、ボロボロのコアに出会うことがありました。
品質を保ちつつ利益を出すというのは企業にとって当たり前のことですが、担当者レベルになるとExecutivesからの圧力もあり、利益が優先される場合があります。これに盾突いて品質を優先する技術者は(程度にもよりますが)、まず民間企業では偉くなれません。結果、利益や株主優先の企業が出てくるのでしょう。
3次元モデラーに入力できるようにしている点は、さすがです。疑似RQDなど、やや品質が落ちたとしても、多数の孔のデータを自動マッピングできるのは基図としてはありがたいと思います。AIに解釈させた結果を提示させるのではなく、画像上の客観的事実のみをAIにより高解像度で提示させたら、後は技術者の仕事です。おかしな点は技術者がログをまとめるなり、モデリングするなりの過程で気づくと思います。
多くのボーリングを整理する必要に迫られた場合、なかなか有向かもしれません。
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