2015年4月26日日曜日

粒子形状と粒子間摩擦

砂防学会誌3月号より
松島亘志「斜面崩壊・流動解析における粒子形状モデリングの意義」

これ、個人的には興味があったところでした。

岩盤が崩壊し、土砂となって流下する場合、体積が増えます。これを既存の手法でモデル化するとなればDEMが一番手っ取り早いように思えるのですが、実際は膨大な粒子が必要となり、計算負荷の面で却下となります。また、土の粒子形状や粒子表面の摩擦をどのように設定するのか?などと(手も動かさずに)ぼんやり考えていました。そのヒントが書かれていたように思います。

粒子形状のモデル化については、古くから議論があるようです。この文献の中では、その1つを使って月表面表層砂の安息角を再現しています。結果、「2要素モデル」で十分だったようです。軽い結果でしたので実務でも使えそうだなあとぼんやり感じながら読み進めました。

粒子間摩擦も20度以上で一定となる結果。
粒子間のバネ定数や減衰定数の影響も限定的だそうです。良いですね。

で、最後に間隙比とせん断抵抗角の図で、「ああ、やはり」という結果。
4要素モデルと10要素モデルで異なる結果、粒子数も600と3000で異なる結果。この試行結果では収束していないので、さらにモデル要素数、粒子数を増やして収束を確認する必要があるとのこと。残念。ま、その結果はそのうち掲載されるでしょう。

DEMで見かけの体積変化を(実務レベルで)扱えるようになるのは、まだ少し先でしょうか?プロがそばに欲しいですね。

2015年4月22日水曜日

ArcMap で 地理院地図

井戸調査の結果をArcGIS 10.2で整理しました。

Arcは普段使用していませんので、後輩に助けを請いながら、思い出しつつの作業です。

Arc くらいになると、住所を読み込めば自動でジオコーディング&プロットしてくれるのかと思いきや、まだそこまで至っていない模様。後輩に聞くと、Webで事前に変換しているとのこと。検索してみると、それなりにジオコーディングのサイトがありました。
いくつか見ておりますと、EXCELのVBAの紹介がありました。IE 経由で Google Map に住所を送り、帰ってきた body から緯経度を抜き出すもの。ちょうど井戸調査結果の住所をEXCELで処理していましたので、そこに緯度・経度をはめ込むよう VBA をいじって変換してみました。ん、便利です。
途中、200ほどリクエストを送ったあたりからロボットと判断されてしまいましたが、少し時間を置けばすべて変換できました。
*後で知ったのですが、Arcにもジオコーディング機能はあるようですね
http://resources.arcgis.com/ja/help/main/10.1/index.html#/na/002500000025000000/


で、コーディング後のデータをプロット&区分するのは容易なのですが、基図として用意した住宅地図は表示が重く、また座標をもっていません。それ以外には基図がありませんし、基盤地図情報からDLして変換するのも面倒です。Google Map のように、自動で住宅地図レベルまで表示してくれるとありがたいのですが、後輩、その機能も使っていないのでわからないとのこと。iOS版のアプリでは表示してくれますし、オンラインもあることですので可能だろうと、サポートに質問しようかと思いきや、HPに以下のアナウンスが掲載されていました。
https://esrij-esri-support.custhelp.com/app/home

新着情報


おお、なんというタイミング。
ありがたく DL させていただきました。
(公開は1年前、昨日より空中写真が使えるようになったようです)

インストール後、標準地図をクリックすると、一発で地図が表示されました(淡色地図や空中写真はスケールを拡大した状態でないと表示されないようです)。井戸の位置もバッチリ。地図上に、色分けした井戸が重なりました。簡単でした。

これで基図を準備する必要がなくなりました。ありがとう!ESRIさん。
あとは基盤地図情報も1クリックで表示できるようになればベストです。期待しましょう。

2015年4月19日日曜日

UAV は落ちる

先日、後輩達が Phantom による空撮を行っていました。

私は近くで施工屋さんと別の話をしていたのですが、その後、UAV の話に。
「あんなところで引っかかると回収に行くのが大変ですね」「安いので捨てると思いますよ」

で、後輩のところへ戻ると、墜落していました。orz

以前、他社さんと UAV の話になった際に、「1年間で○○円落としました」「UAV は落ちるものです」と言われていました。Phantom のようなノーコン持ちのおもちゃでなく、1ケタ上のプロ仕様、2ケタ上の損失で出された答えが「UAV は落ちる」です。説得力があります。その後の「プロに任せるべき」は、リスク&リターンを経験・考慮された上での結論でしょう。

安いマルチコプターが普及しています。初期投資が小さく、操作が容易なため、コンサルタントは勿論、施工屋さんも導入されています。搭載する機材も、カメラ以外にレーザー、熱赤外などが出てきました。容易な3次元可視化、測量、点検への活用も導入を後押ししているのでしょう。そのため、(今後数年間は)「撤退」という選択肢はありません。墜落することを前提に活用の場を吟味するしかないようです。


2015年4月18日土曜日

井戸調査

今日は井戸調査。

井戸調査は事業開始前に実施するのが基本です。
通常、事業に反対される方もいらっしゃいますので、調査が簡単に終わることはありません。
また、セールスと勘違いされ、話も聞かれず断る方、怒鳴って追い返そうとする方も多くいらっしゃいます。朝からお酒を飲まれて話が進まない方もいらっしゃいます。病院や施設へ入所されていたり、平日や昼間は働かれているのでお会いできない方、昼間は夜勤で寝ていらっしゃる方など様々です。当然、どのような方とも一切トラブルを起こすことなく調査を進めるのが基本です。理不尽な怒られ方をしても、トラブルが大きくならないよう切り抜けることも必要です。自分の仕事がサービス業であると強く感じる仕事の一つです。

全地連の赤本によれば、井戸調査は2種類あります。
井戸の有無を確認する井戸調査A、その結果をもとに用途や構造等を調べる井戸調査Bです。通常は同時に行いますが、順を追って実施する場合もあります。井戸調査Bが終わらないとモニタリング計画を立てられませんし、調査漏れがあると、その計画も一気に覆る恐れがあります。また、新たにモニタリング孔を設けた後に井戸が発見されると、無駄なお金を使ってしまったことになります。
予測手法として浸透流解析を選択する場合では、観測点配置そのものが解析の信頼性にも影響します。できるだけ多くの観測可能な井戸を押さえておき、適切な配置を検討したいものです。

調査目的を考えると、その過程はどうであれ、おろそかにはできません。
たかが、されど、です。


2015年4月3日金曜日

InfraWorks 2015 の問題

私が使用しているのは InfraWorks 2015 です。360ではありません。

2台のPCに Ver.15.3 と 15.1 を入れていたのですが、このマイナーチェンジで仕様が大きく変更されています。Civil3D 2015 Productivity Pack 1との連携を深めたのが15.3だそうです。

結果、以下の対応を迫られましたが、今回はサポートさんの迅速な対応に、大助かり。Gracias!
  • 15.1 では Civil3D で作成した着色済みソリッドの dwg が読めた。が、15.3で読めなくなった。15.3では基本 FBX 読み込み only 。
  • Civil 側で FBX に変換した時点で、色情報が失われる。Infra 側で読み込み後に着色できない。そのため、Civil側で変換前にマテリアルをあてておく必要あり。
  • InfraWorksでは、他の Autodesk 製品で使用されているマテリアルを独自変換して表示する。互換性は低く、読めるマテリアルが少ない。
どこまでも中途半端です。
可視化は容易ですが、出来栄えはのっぺりとしており CG としてはイマイチ。道路を簡単に表現できるが設計には使えない、オフラインで提供できるViewerがなく、オンラインで共有するには360が必要。
一体、どこを目指しているのでしょうか?Autodesk さん!

*********************************************************
20150409追記
Autodesk -Technical Q&A に上記問題の詳細が登録されました。2016も同様のようです。
http://tech.autodesk.jp/faq/faq/adsk_result_dd.asp?QA_ID=9598
http://tech.autodesk.jp/faq/faq/adsk_result_dd.asp?QA_ID=9594
http://tech.autodesk.jp/faq/faq/adsk_result_dd.asp?QA_ID=9595
http://tech.autodesk.jp/faq/faq/adsk_result_dd.asp?QA_ID=9606


20150411追記
そういえば、以下の問題も問い合わせました。詳細がUPされています。
LandXMLがズレる。>15.1から15.3にUPで解決。
http://tech.autodesk.jp/faq/faq/adsk_result_dd.asp?QA_ID=9597

DWGの曲面がおかしくなる問題は分解して対処しましたが、設定があったのですね。
http://tech.autodesk.jp/faq/faq/adsk_result_dd.asp?QA_ID=9416

2015年4月2日木曜日

ソリッドモデル

先日、CG部門の先輩に、構造物の可視化について相談しました。

先輩が主に使われているのは、3ds Max。
構造物の可視化はおもて面だけでよいので、裏側や地下は作りこまない「はりぼて」でよいとのこと。それでも簡単な方法はなく、手作りで時間をかけるしかないそうです。先輩のCGは非常にきれいですからね。

一方、地質のCGは、いつもお断りされているそうです。3次元分布の推定が地質屋さんでないと難しいというのもあるようですが、ポリゴン・サーフェスモデラーでは、ソリッドモデルを作り込めないという根本的な問題があるとのこと。
地質は、(可視化の場合)色つきの断面が必要です。どこで切っても、色付きの面が見えないといけません。前者ではそれが実現できません(事前に断面を切る位置に面を貼っておけば、それらしく見えます)。
また、地層は構造物のように決まった形でなく、ソフトが異なれば同一面が再現できない(推定式やクリギングパラメーターの違いを含む様々な問題)というのもあると言われていました。確かに、この点は CIM でもクリアーすべき大きな課題と考えています。

構造物(ポリゴン・サーフェスモデル)や地質(ソリッドモデル)など、「すべてを1つのソフトで表示するのは難しいので、対象を絞らないといけない」とアドバイス頂きました。うーん、確かに。MVSで、地下も地表も一度にモデル化していたのですが、できたモデルを見ると地表(構造物と地形の接触)はイマイチ。設計者にも見せてみましたが、反応イマイチ。お客様が興味のあるのは構造物ですので、こちらをもう少し作り込まなくては御期待に沿えません。

結局、地表のモデルを Infraworks 2015で追加。
Infraworks の品質は Max よりもかなり劣りますので、今までCGのような「商品」として提供するのは避けていました。が、今回は MVS で使用した構造物や地形などのパーツをそのまま流用できますので、「おまけ」感覚で追加してみました。
で、作ってみると想像より出来が良く、MVS の地表モデルよりは立派。つべこべ言わず、手を動かせ!でした。

Infraworks で着地点までの見通しが立ちましたので、ここから作り込もうと決めました。
が、途端にいくつか問題が出てきました。ま、それはまた後日。






2015年4月1日水曜日

有効応力解析と全応力解析

FEMを使った変形解析では、静的全応力解析が主流です。有効応力解析は、圧密や液状化の問題に利用されています。

基本的には変形(変形係数・ポアソン比・せん断剛性)の話題になりますので、ここ数日の有効応力法・全応力法(c・φ・安全率)の議論とは土俵が異なります。が、自重解析での塑性化チェック、弾塑性モデル、SSRM 、ダイレイタンシー角などを扱う必要があるでしょうから、やはり基礎知識として押えておくべきでしょう。

数値計算における有効応力解析と全応力解析の違いについて、詳細に説明した書物は見当たりません。もっと先の話をするために本を書かれているからでしょう。基本的には、変形に関し浸透・水圧の計算を取り扱っている(土の計算と連成している)か否かの違いです。
それらの違いやパラメータの取り扱いについては、以下の入門書が丁寧で参考になると思います。
備忘録を兼ねてピックアップしてみました(いやー、忘れていますね)。

地盤工学会「地盤技術者のためのFEMシリーズ①初めて学ぶ有限要素法、②弾塑性有限要素法が分かる」
動解での全応力解析と有効応力解析 ②P198 
全応力解析(土骨格・間隙水を一体として扱う)
有効応力解析(土骨格・間隙水を個別に扱う) 
地震時は、よほど透水性のよい砂礫でない限り非排水
非排水せん断で、ダイレイタンシーによって過剰間隙水圧発生
全応力解析では、過剰間隙水圧の影響を含めた形での動的変形特性や動的強度特性を用いる必要がある。しかし、大ひずみ領域ではダイレイタンシー挙動や繰り返し効果が顕著になり、過剰間隙水圧を陰に含んだ全応力強度特性を室内試験から設定することは困難。
全応力解析はダイレイタンシー挙動がさほど顕著に表れない中ひずみまでの領域で用いられることが多い。
大ひずみ領域では、有効応力解析を用いざるを得ない。 
単位体積重量 ①P152②P199
中ひずみ以下での「非排水条件下での飽和地盤を対象とし、動的変形特性を用いた全応力解析」の密度・・・粘性土や地下水以浅:湿潤密度、地下水位以深:飽和密度
有効応力解析を行う場合は、地下水面下で有効単位体積重量γ’を用いればよい。 
変形係数 ①151②P209
有効応力解析の弾性係数E’
一軸のE50は非排水であり、全応力に対する弾性係数。
有効応力解析では、有効応力に関する弾性係数に変換する。利用するのはせん断剛性G。せん断剛性G=E’/2(1+ν’)は体積変化に無関係。
E’/2(1+ν’)= E50/2(1+ν)
E’=E50(1+ν’)/1.5
有効応力解析のν’=1/3程度。
(講習会では、「粘土の側方流動などを扱う場合、ν=0.1~0.2程度が多い。0.3を超えることはない。」と言われていました)

ソフトによって水位や単体の入力・表現方法、ダイレイタンシー特性の設定法などにルールがあります。そのソフト・コードがどのような処理をするのか理解しないと、パラメーターの設定を大きく誤ります。まず確認、ですね。
FORUM8さんはFAQとして掲載されています。確認される方が多いのでしょうね。

有効応力解析UWLC
http://www.forum8.co.jp/faq/win/uwlc.html#q1-5

全応力解析GeoFEA2D
http://www.forum8.co.jp/faq/win/geo2d.htm#q2-32
http://www.forum8.co.jp/faq/win/geo2d.htm#q2-33
http://www.forum8.co.jp/faq/win/geo2d.htm#q2-81


全応力法(圧密持有効応力法)、有効応力法、全応力解析、有効応力解析、ややこしいように思えますが、ベースは至ってシンプルです。

地すべりと有効応力法

地すべりの場合、実務では2次元逆算法が主体です。

この場合、c、φは計算用のフィッティングパラメーターとしての色合いが強くなります。cは層厚から(全応力法的に)決定し、安全率よりφを逆算します。全応力法でも有効応力法でもありません。言わば経験的手法です。


有効応力法の順解析を研究された方もいらっしゃいます。例えば、以下の文献です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscej1984/1997/575/1997_575_1/_pdf

これは、地すべりのせん断が非常に遅いため、粘土も排水強度で評価できるとの考え方です。c'、φ'は乱れの影響を受けにくい、そのため、コアからとった乱した試料で試験が可能。というユニークな研究でした。
当時、この一連の文献を読んだ際には「使える!」と思ったのですが、現在、ほとんど普及していません。経験的手法(主測線での2次元逆計算)の方が安価で実績があると考えられている?分野ですので、ため池や河川ほど土質力学が入ってこなかったのでしょう。
農林さんも土質力学(ピーク強度と残留強度)を踏まえたc・φ設定法を図書にされていましたが、こちらもなかなか普及していません。発刊当時、これも良い手法だと思ったのですが。

近年、トンネルと地すべりの問題では、3次元安定計算の実施が増えています。が、c、φの考え方についてはいまだに進歩がありません。有効応力法、全応力法どころか、基礎となる土質力学の観点からは、ほとんど進歩していない分野です。