2011年8月1日月曜日

パイプ流のモデル化

本棚を整理していると、愛媛大学・地盤工学会四国支部「豪雨時の斜面崩壊のメカニズムと予測に関する論文集」が出てきました。

2001年8月ですから、ちょうど10年前です。
当時、このような論文集があるということで、コピーを送ってもらった記憶があります。
中を見てみましたが、技術レベルは何も変わっていないですね。停滞しているのか、再現や予測の限界なのか、興味のある方が少ないのか?

そう思いながら、中身を見てみると、当たりがありました。
ある論文の参考文献の中に、パイプ流のモデル化に関する資料が掲載されていました。以前、「再現できません」と書きましたが、やっている方が10年前にいらっしゃいました。
http://www.jsece.or.jp/event/conf/abstruct/2001/pdf/2001O119.pdf
http://www.jsece.or.jp/event/conf/abstruct/2001/pdf/2001O120.pdf
http://phreeqc.blogspot.com/2011/04/blog-post_27.html

論文になっていれば詳細な設定が分かるのでしょうが、この資料だけでも具体的なモデル化の方法は想像できます。結果も面白いですね。パイプがない場合、ある場合、閉塞している場合と分けて示されています。これ、表層崩壊のイメージに結びつきますよね。そのイメージを持った方がモデル化して結果を良しとし、発表されたのでしょう。実際は空気圧もかかるでしょうから、もう少し複雑なモデルになるのでしょうが、浸透流だけでも工夫すればモデル化が可能なことは分かりました。

あとはどう調査するかですね。
地下水調査のスケールを考えないといけません。ある斜面に対し不均質なモデル化をするために、不均質地盤を把握しないといけないのです。前にも書きましたが、難しいでしょうね。

もし、このモデル化で現象を再現できるなら、解析ツールは10年前にほぼ揃っていたということになります。停滞していたのは崩壊メカニズムの把握と解析ツールの開発ではなく、地質屋がそれを理解し、必要な調査をしてこなかったか、理解したけれども調査できなかったことに起因するでしょう。私自身、10年後、ある斜面の水みちを詳細に把握できるか考えると、難しいと思います。

スケール因子やSISimで透水係数場を確率論的に発生させ、複数ケース回して最も壊れやすい場所を選択するというのも一つの手かもしれません。地質屋さんなら、ある意味、敗北を認めることになるため嫌な手法だとは思いますが、答えが確実に出る確率論は実務では有利です。そうなれば、ある程度調査手法や数量も見えてきます。

いずれにしても、飽和・不飽和浸透と斜面崩壊の問題は、地質屋が努力し、さらに自然から学ばないと解決できない領域ということなのでしょう。

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